油絵で震災の記憶継承へ 福島県双葉町の伝承館に展示 名古屋市の画家伊藤さん

 

自身が描いた油絵を披露する伊藤さん。震災と原発事故で被災した県民の声が記されている

 

2025/10/05 10:32

 

 名古屋市在住の画家伊藤崇人さん(72)が東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生直後に描いた油絵が4日、福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で披露された。震災で被災した千人以上の県民のメッセージが絵の上に記されている。伝承館が館内に常設展示し、複合災害の記憶と教訓の継承に役立てる。

 伊藤さんは全国各地で水彩や油彩、エアブラシなどの材料を使った絵画を手掛けている。今回の油絵は震災が起きた2011(平成23)年夏ごろ、各地を巡っている中で親交を深めた開成山大神宮(郡山市)の宮本孝宮司の承諾を受け、神社内で制作を開始した。

 タイトルは「被災地からのメッセージ」。複合災害により先行きを不安視する母親、明るい未来を願う子どもを描き、発災直後の混乱と被災地の早期復興への祈りを表現した。

 当時、国内外から福島への応援の声が寄せられていたが、「被災者の今の声を発信するのも重要」と2011年末に神社内に絵を置き、県民の生の声を記してもらう場を設けた。期限の約1週間で次々とメッセージが集まり、「福島に幸せな未来を」「双葉に戻れる日が来ますように」などの言葉がペンで記載された。

 全国の美術館などでの展示を経て、2013年に県に寄贈された。多くの人に見てもらおうと、伝承館が4日から館内で常設展示を始めた。絵をお披露目した伊藤さんは「絵を見て当時の県民の思いを感じ取ってほしい」と願った。

 絵の披露は伝承館の開館5周年イベントの一環で行われた。この他、伝承館研究員による研究成果発表、絵本作家の松本春野さんによる絵本作りのワークショップなどが繰り広げられた。

 

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