柳美里さん全米図書賞  翻訳文学部門で快挙

 

世界的文学賞の一つ、全米図書賞が米国で18日(日本時間19日)オンライン発表され、翻訳文学部門で南相馬市在住の芥川賞作家、柳美里さん(52)の小説「JR上野駅公園口」が選ばれた。2018年に受賞したドイツ在住の芥川賞作家、多和田葉子さん(60)に続く快挙だ。

柳さんはオンライン授賞式で「とても幸せ。東日本大震災と津波、原発事故の後、苦難の途上にいる南相馬の人々とこの喜びを分かち合いたい」と語った。受賞作は高度成長から取り残されたホームレスの男性を描いており、格差や貧困が際立つ新型コロナウイルスの時代と共鳴した格好だ。

「JR上野駅公園口」は1964年の東京五輪の前年、家族を養うために福島から東京に出稼ぎに来た男性の物語。同賞のホームページは「日本の近代化で多数の人が社会の片隅に追いやられ、無視されてきたことを読者は知ることになる」と紹介した。

■2015年に移住、執筆活動 本紙で「南相馬にて」連載

柳美里さんは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故をきっかけに南相馬市に足を運び、2012年から6年間、臨時災害放送局「南相馬ひばりエフエム」の番組「柳美里のふたりとひとり」でパーソナリティーを務めた。

2015年に神奈川県鎌倉市から南相馬市に移住し、2018年に自宅に書店「フルハウス」を開店させた。執筆活動も続けている。同年、主宰していた演劇ユニット「青春五月(ごがつ)党」を同市で復活させた。地元の高校生や住民と一緒に演劇活動にも取り組んでいる。今年3月には書店をブックカフェに改装して再オープンさせたほか、2015年5月から福島民報でエッセー「南相馬にて」を連載している。

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