仮想空間で原発災害訓練 非対面で3密回避 福医大がソフト開発
福島医大は、学生や医療従事者らが仮想空間で原子力災害訓練に取り組める教材用ソフトウエアを開発した。原発事故現場などを想定した空間でアバター(分身)を動かし、適切な医療提供の在り方を学ぶ。対面せずに複数人で訓練できるため、新型コロナウイルス禍で感染が懸念される「三密」の場面を避けられる。二十一日、学生らがソフトウエアを使い、有事の対応に理解を深めた。
東京電力福島第一原発を模した空間や、放射性物質を含む爆破テロが発生した場面などを表示できる。指導教員が現場の空間放射線量を設定でき、参加者は必要な防護服や医療用資機材を選択し、アバターを操作する。
けがの状況に応じて対応の優先順位を決めるトリアージ、場所の安全性を踏まえて区域を分けるゾーニングなどを学べる。最大二十人が参加でき、日本語と英語に対応する。
ソフトの名称は「カワウチ・レジェンズ」。東日本大震災直後から富岡消防署川内出張所を拠点に消防救助活動に当たった双葉地方広域消防本部に由来している。福島医大は毎年、同消防本部と災害訓練を行っているが昨年は新型コロナの影響で中止した。オンライン活用が広がる中、仮想空間で訓練できないかと、放射線災害医療学講座を中心にソフト開発を進めた。東京都のアプリケーション開発会社「Mark-on(マークオン)」が製作を担い、同消防本部や長崎大が協力した。福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援を受けた。
二十一日は福島医大と長崎大の約十人が訓練を実施した。
放射線災害医療学講座の長谷川有史主任教授(52)は「原発事故の経験者として福島の経験や教訓を伝える使命がある。医療従事者、消防・警察関係者、一般市民にも使ってもらいたい」と幅広い活用に意欲を示した。開発の中心的役割を担った井山慶大助教(33)は「対面の訓練と上手に組み合わせ、知識を深められる仕組みを整えたい」と語った。
マークオンの檜山正樹社長は「リモート活用が広がる中、ソフトの大きな可能性を感じた」と話した。