セシウム濃度変化を解明 福大環境放射能研究所、除染への活用期待
福島大環境放射能研究所のアレクセイ・コノプリョフ特任教授と脇山義史講師らの研究グループは、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域内のため池の長期的なモニタリングにより、水中の放射性セシウムの濃度変化や要因を明らかにしたと三日、発表した。除染や将来的なため池の管理を考える上で、有益な知見になると期待される。
研究グループは福島第一原発から四キロ以内にある大熊町の三つのため池で、二〇一五(平成二十七)年から一~三カ月の間隔で採水し、濁り成分と水それぞれに含まれているセシウム濃度を測定した。水に含まれる放射性セシウムには、水中に溶けている「溶存態」と、土壌粒子や有機物などに吸着・固定されている「懸濁(けんだく)態」がある。調査結果では、セシウム濃度は時間の経過とともに低下するが、懸濁態に対し、溶存態のセシウム濃度の減少割合が緩やかであることが判明したという。一因としてガラス質の高濃度放射性セシウム含有粒子が溶解し、濃度に影響を与えている可能性を突き止めた。
また、溶存態の放射性セシウム濃度は夏から秋にかけて高くなる傾向も見られた。
コノプリョフ特任教授は「今後も環境中のセシウムの動きを明らかにしていく」と語った。
研究成果はエルゼビア社が発行する学術誌「Chemosphere」に掲載された。