災害時の死者氏名公表 福島県方針転換、遺族同意など条件付き

 

 福島県は二十五日、地震や台風などの自然災害による死者について、遺族の同意など条件付きで氏名を公表する方針を決定したと発表した。プライバシーを理由に非公表としていた従来の姿勢から転換した。行方不明者については、捜索や救助のため緊急性があれば家族の同意なしでも氏名を公表する。

 県が設けた死者の氏名公表の基準は、遺族の同意のほか、死亡の事実と身元情報の確定、市町村で住民基本台帳の閲覧制限のないことの三つで、これらを全て満たした場合に限り公表する。身寄りがないなど遺族と連絡が取れない場合については公表しない。

 行方不明者の氏名公表を巡っては、人命に関わる捜索・救助活動の円滑化や効率化が見込まれる状況で、住民基本台帳の閲覧制限がなく、家族の同意が得られた場合とした。ただ、県災害対策本部が設置される大規模自然災害の場合に緊急性があると判断すれば、家族の同意なしでも公表する。

 二〇一九年十月の台風19号とその後の記録的大雨による災害で、県内で溺死などの直接死は三十二人に上ったが、県はプライバシーの尊重を理由に氏名を公表しなかった。

 全国的に大規模な自然災害が相次ぐ状況で都道府県によって対応が分かれていた。県が二〇二〇(令和二)年六月に四十六都道府県の対応を調べた結果、六割を超える三十一自治体が死者の氏名を原則または条件付きで公表していた。県は災害の教訓を将来に生かすなどの観点から、死者の氏名公表が必要だと判断した。

 全国知事会が氏名公表に関するガイドラインの作成を進めており、県は内容次第で方針の見直しも検討する。

関連記事

ページ上部へ戻る