知事懸念「努力水泡に」 経産相に風評対策など要請 処理水海洋放出

 東京電力福島第一原発事故で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出方針決定を受け、内堀雅雄知事は十五日、経済産業省で梶山弘志経済産業相と面会し「県民が十年にわたり積み重ねてきた復興や風評払拭(ふっしょく)の成果が水泡に帰す懸念がある」と伝えた。海洋放出を担う東電の不祥事が相次ぎ、信頼が失墜している現状を重くみて、東電への監督指導を強化するよう求めた。海洋放出決定への賛否については言及しなかった。 

■決定の賛否言及せず

 会談は冒頭を除き、非公開で行われた。内堀知事は、福島県が処理水の海洋放出で新たな風評被害が生じる懸念と、廃炉作業の進展を通した避難地域の早期復興という「大きなジレンマ」を抱えていると強調。国に対して福島県の実情を理解した上で責任ある対応を求めた。 

 処理水の海洋放出によって「県民が積み重ねてきた風評払拭の努力」を後退させないよう国が前面に立ち、関係省庁が一体となって万全な対策を講じてほしいと要請。(1)関係者に対する説明と理解(2)浄化処理の確実な実施(3)正確な情報発信(4)万全な風評対策と将来に向けた事業者支援(5)トリチウムの分離技術の継続的な検討-の五項目を申し入れた。 

 風評に対する懸念が生じている主な要因について内堀知事は、処理水に関する情報が十分に伝わっておらず、風評対策が具体的に示されていないためだと指摘。農林水産業や観光業をはじめ関係者や自治体などに丁寧に説明するよう求めた。 

 東電の不祥事を巡っては、今年二月に発生した福島県沖地震の際、3号機に設置していた地震計を修理せずに放置し地震データを記録できなかった。新潟県の柏崎刈羽原発ではテロ目的などの侵入を検知する設備の故障を放置するなど核物質防護上の重大な違反が発覚した。内堀知事は「多くの県民が不安を感じている」とし、県民目線で東電の管理体制が改革されるよう指導、監督を申し入れた。 

 梶山氏は「県民の努力を無駄にせず、復興の歩みを前に進めるとの強い決意を持って先頭に立って対応したい」と応じた。不安の声が多い損害賠償については、東電への働き掛けなどを行う特別チームを近く省内に設置する方針を示した。 

 会談終了後、内堀知事は記者団の取材に応じ、海洋放出への賛否に言及しない理由について「廃炉に責任を持って取り組むのは国と東電であり、それが県の基本姿勢。日本全国に関わる問題であるからこそ、政府が責任を持って決定するのが重要だ」と説明した。十五日午前には記者団に「(海洋放出を)容認するか、しないかを言う立場ではない」との認識を示していた。 

■関係閣僚会議で16日意見表明 

 政府は十六日、「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚会議」の第一回会合を開き、国が取り組む新たな風評対策の本格的な検討に入る。内堀知事も出席し、政府による取り組みの徹底などを求めるとみられる。 

●福島第一原発の処理水処分について県が国に求めた取り組み 

(1)関係者への説明と理解醸成 

(2)浄化処理の確実な実施 

(3)正確な情報発信 

(4)万全な風評被害対策と事業者支援 

(5)処理技術の継続的な検討

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