通常医療の維持正念場 福島県、コロナ病床増へ インド株の流行懸念

 

 県は新型コロナウイルスの感染者を受け入れる病床を現在確保している四百六十九床からさらに増床し、軽症者向けの宿泊療養施設も並行して増やす方向で県内の医療機関などと調整に入った。ただ、コロナ病床は最大限まで確保しているのが現状。限られた医療資源の中で県はコロナ療養とコロナ以外の通常医療を両立させる難しい調整を迫られる。通常医療の維持に向けて正念場を迎えた。 

 内堀雅雄知事は十七日の定例記者会見で、「確保病床をもう一段階高められないか、医療機関と協議を続けている」と述べ、コロナ対応病床のさらなる確保に向けて調整を加速させる考えを明らかにした。具体的な確保数は示していない。 

 県がさらなる増床に踏み切らざるを得ない背景には、感染力の強い変異株への警戒感がある。従来株に比べ、入院を必要とする中等症などの患者が増えており、早期の入院治療が不可避となっている。今後、さらに感染力の強いインド株の流行も懸念される。内堀知事は「変異株は昨年までのウイルスと違う。肺炎などを起こしやすいと現場で実感している」として、入院枠を拡大させる必要性を強調した。 

 県は新型コロナの感染拡大に備え、各医療機関の協力を得ながら段階的に病床数を増やしてきた。ただ、県によると、病床は逼迫(ひっぱく)しており、コロナ対応のために通常医療の入院や手術を延期するケースも出ている。 

 県によると、コロナ患者の対応に当たる看護師は、通常医療の場合の約三倍の人数が必要で、各医療機関は他の診療科の看護師を減らして、かき集めているという。このためコロナ対応で看護師が不足し、感染防止対策を講じる必要もあるためコロナ病床を一つ増やす場合、二倍以上の一般病床を減らさなければならないのが実情だ。 

 医療の逼迫度合いを下げるには、軽症者向け宿泊療養施設の拡充も不可欠だ。現在、福島、会津若松、郡山、いわきの四市のホテルに計二百四室を確保しているが、県は医療機関への負担を減らすために療養施設の確保室数を増やしていく方針だ。 

 県感染症対策アドバイザーを務める福島医大感染制御学講座の金光敬二教授は「(コロナ)病床の拡大は一般病床の削減とも言える。医療崩壊の可能性が現実味を帯びてきた」と警鐘を鳴らす。 

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