「五輪誘客」どうなる 準備いまだ手探り 福島のホテル、バス、タクシー ソフト開催まで2カ月余
新型コロナウイルス感染拡大で一年延期となった東京五輪開幕まで二カ月余り。観客数の上限が決まらない中、全競技のトップを切って七月二十一日にソフトボールが行われる福島市では宿泊や運輸など民間事業者は手探りの準備を続ける。ビジネスホテルへの予約は大会関係者が中心で一般客からはほとんどない。コロナ禍で売り上げが落ち込んでいる上、五輪での誘客が見通せず、関係者は「復興五輪のはずなのに効果はあるのか」と不安を抱いている。
「客からの問い合わせはない。予約の動きは非常に鈍い」。福島市旅館ホテル協同組合理事長の渡辺豊さん(71)=ザ・ホテル大亀会長=は現状を明かす。
組合には市内十九施設が加盟している。海外の一般客を受け入れないことは決まったが、観客数上限の方向性は示されていない。県営あづま球場で実施される野球・ソフトボール競技の観客の宿泊に期待するが予約申し込みはほとんどないという。新型コロナの影響で観光や各種スポーツ大会などの宿泊者が減り、宿泊業界は一年以上、厳しい状況が続いている。「五輪の開催自体が危ぶまれている。経済活性化への期待は薄い」と声を落とした。
市内のビジネスホテルには期間中、大会関係者数十人の予約が入っているのみ。担当者は「今は待つしかできない」と焦燥感を募らせる。土湯温泉町の山水荘には、一般客からの宿泊問い合わせはほとんどなく、予約担当の藤原誠さん(40)は「この先どうなるのか」と不安を口にする。
観客の輸送を担う関係者も暗中模索の対応を迫られている。県バス協会は大会関係者や選手の輸送、観客用シャトルバスの運行などを担当する。専務理事の宍戸紳一郎さん(68)は「(大会組織委から)輸送計画に関する確定的な情報が示されておらず、具体的な準備に取り掛かれない」と説明する。
加盟する四十九事業者に協力を呼び掛け、乗り合い、貸し切りバスの確保を進めているが、観客数の規模によって配置が変わる。慢性的な運転手不足もあり、「時間がない。明確な台数や輸送ルートなど会員事業者への説明もでず、やきもきしている」と漏らした。
市内にある二十のタクシー業者でつくる福島地区タクシー協同組合副理事長の大村雅恵さん(68)は「先行きは不透明だが、地元での開催を支えていきたい」と強調した。
■ホストタウン 交流事業の対応模索 オンラインや時期ずらす
ホストタウンや復興「ありがとう」ホストタウンとなっている市町村は、相手国などと協議を重ねるなど対応を模索している。
各市町村の対応状況は【表】の通り。事前合宿などを受け入れるホストタウン九市町村は変更なしか、協議中となっている。いわき市の清水敏男市長は事前合宿について「感染状況を踏まえると非常にハードルが高い」と指摘。既にサモア側にも受け入れが難しいという考えを伝えており「状況を見ながら、可能な限り交渉を続けたい」と話す。
住民との交流がメインの復興「ありがとう」ホストタウンは、対応を協議中としている市町村が多い。飯舘村は五月から七月にかけ、住民と選手が参加するオンラインイベントを開催する方針。ただ、ラオス側の選手団が決まっておらず、実施時期は未定のまま。本宮市は英国の子どもたちを招待して交流事業を予定していたが、大会後に時期をずらしての招待に切り替える方向だ。
競技会場がある福島市は七月下旬、JR福島駅周辺で大型ビジョンでの競技中継などを計画している。市東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進室長の三浦裕治さん(55)は「できる限り準備を進めるが、どこまで人を集めていいのか悩ましい」と頭を抱える。
■東京五輪に向けたホストタウンの取り組み状況
【ホストタウン(事前合宿など)】
福島(スイス、ベトナム)=協議中
会津若松(タイ)=変更なし
郡山(オランダ、ハンガリー)=変更なし
いわき(サモア)=協議中
二本松(デンマーク)=変更なし
田村(ネパール)=変更なし
大玉(ペルー)=協議中
南会津(アルメニア)=協議中
猪苗代(ガーナ)=合宿は変更なし、イベントは協議中
【復興「ありがとう」ホストタウン(交流イベントなど)】
白河(カタール)=合宿は中止、イベントは協議中
喜多方(米国)=協議中
二本松(クウェート)=変更なし
南相馬(ジブチ、台湾、米国、韓国)=協議中
伊達(ガイアナ)=協議中
本宮(英国)=協議中
北塩原(台湾)=協議中
川俣(アルゼンチン)=変更なし
広野(アルゼンチン、インドネシア)=変更なし
楢葉(アルゼンチン、ギリシャ)=変更なし
飯舘(ラオス)=変更なし