新地「海のみえるガーデン花木山」開園10年 苦境乗り越え
新地町の鹿狼山の麓にある「海のみえるガーデン花木山」は来月、開園から十年を迎える。園主の荒正治さん(70)=同町福田=が東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた二〇一一(平成二十三)年六月にオープンし、二百種近いバラを中心に季節の花が咲き競う。台風や地震、コロナ禍と度重なる苦境に立たされたが、荒さんは「来場客の温かい声に支えられた」と振り返る。
■園主の荒さん「温かい声に支えられた」
荒さんはかつて相馬市内の病院の事務局に勤務。花に興味はなかったが、ある日、亡き父が自宅で大切に育てたバラが一輪咲いたのを見て「自然と花屋に足が向いてね」ときっかけを語る。一念発起して五十七歳で早期退職。太平洋を望む高台の土地を借り、各地を回ってバラを買い集め、準備を進めた。
開園直前に東日本大震災の津波で沿岸部の自宅が損壊。花木山にも地割れが走った。一緒に準備してきた妻に「もうやめよう」と言われたが、後には引けなかった。開園後は二人で少しずつ花を増やし、七十アールの園内は季節の彩りが多くの人を引きつける場所になった。
だが、災難は続く。二〇一九年の台風では土砂崩れが起き、花壇がのみ込まれた。休園して復旧作業をし、年が明けて再開したが、今度はコロナ禍に見舞われた。昨年から今年にかけ来場者は減少。二月には震度6弱の地震で再び園内に地割れが起きた。さらに開園十周年に合わせて今月末、園内で記念演奏会を開く予定だったが、県の非常事態宣言発令を受け中止を決めた。
十年を区切りに閉園を考えたことも。しかし「きれいだね」と笑顔を浮かべる人の姿や「続けてほしい」の言葉に背中を押された。「苦しんでいるのはみんな一緒。自分だけ逃げることはできない」
数々の困難に向き合ったからこそ、美しい花で人々の心を癒やしたいとの思いを強くする。丹念に手入れしたバラは、今月下旬から六月中旬まで見頃を迎える。