施設職員も優先接種へ 高齢者 障害者 福島県、クラスター防止で 新型コロナワクチン
高齢者施設や障害者施設での新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生を防ぐため、福島県はワクチンの優先接種の対象について、入所者だけでなく施設職員も加える方向で調整に入った。通勤や業務での往来で施設外と接点がある職員に接種を進め、施設全体の感染リスクを下げるのが狙い。六月最終週までに県内の高齢者全員が二回接種できる分より多いワクチンを確保できる見通しとなり、優先接種の対象を拡大する環境が整った。
福島県はワクチン接種の実施主体である市町村に対し、感染拡大防止や施設運営体制の維持のため、高齢者施設や障害者施設の従事者への接種について配慮を求める考え。具体的な方針を固め次第、全市町村に通知する。
高齢者施設職員への接種は市町村の判断で一部始まっているが、県は全県的に加速させる考え。障害者施設の入所者は主に知的障害者で、高齢者の次の優先順位である「基礎疾患のある人」に含まれるが、高齢者施設と同様に対応していく。
国から県内に配分されるワクチンは、現時点で六月最終週までに約百二十六万回分が供給される見通し。県内の高齢者約五十八万人に対し、一人二回接種に必要な量は約百十六万回分のため、仮に全員が接種した場合でも約十万回分の余裕がある計算だ。
県によると、県内の高齢者施設の従事者は約四万二千人、知的障害者らが入所する施設やグループホームの入所者と従事者は約七千人。県は必要なワクチン量を合わせて約九万八千回分と試算し、現時点での確保見込み量で十分に対応できると判断した。
政府が定めたワクチン接種の優先順位は、高齢者の次に、基礎疾患のある人や高齢者施設などの従事者が位置付けられている。実際の対応は市町村に委ねられ、各市町村が地域の実情を踏まえて判断している。
二十五日現在、県内で発生した七十二件のクラスターのうち、高齢者関連施設は十七件、障害者関連施設は一件となっている。県知的障害者福祉協会の渡部良喜会長(あかまつ荘施設長)は「入所施設では一人が感染すると一気に広がる恐れがある。外部からのウイルスの持ち込みを防ぐためにも職員の接種は重要だ」と話している。
政府は七月末までの高齢者へのワクチン接種完了を目指している。ただ、高齢者向け以降のワクチンの供給の見通しは示されておらず、安定的な接種が継続できるかどうかが課題となっている。県新型コロナ対策本部の担当者は「今後も必要な量のワクチンを確保できるよう国に求め続ける」としている。