福島県の5町村の求め応じず 政府、6月末の方針明示困難 復興拠点外の避難指示解除

 

 福島県の東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)外の避難指示解除方針について、政府は一日、帰還困難区域を抱える福島県内五町村でつくる協議会に対し、六月末までの明示は困難との認識を伝え、協議会が求めていた期限に応じなかった。自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部が六月末から七月上旬にかけて取りまとめる予定の第十次提言を踏まえ政府内で調整する構えで、政府方針の決定時期については明言を避けた。

 協議会長の吉田数博浪江町長が同日、福島市の復興庁福島復興局を訪れ、生沼裕福島復興局長、由良英雄政府原子力災害現地対策本部副本部長らと面会。避難指示解除に向けた政府方針を六月末までに示すよう改めて要請し、「復興拠点外の住民は生活の見通しが立たない」と迫った。

 面会は冒頭以外は非公開で、終了後に由良副本部長が報道陣の取材に対し、政府の見解を明らかにした。各町村による復興拠点の避難指示解除に向けた住民説明会のスケジュールに影響が出ないよう配慮したい意向をにじませたものの、「与党提言の内容を踏まえて検討する必要がある」として政府方針を決める具体的な時期には言及しなかった。

 吉田浪江町長は報道陣の取材に、「復興拠点の整備が進む中、拠点外の住民は『自分たちだけが置き去りにされてしまう』と感じ、行政不信を招く」と危機感を示した。同行した副会長の吉田淳大熊町長は「われわれは住民に(町の将来を)説明する責任がある。国としてもしっかり取り組んでほしい」と強調した。

 協議会は富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾の福島県の五町村で構成している。このうち大熊、双葉、葛尾三町村の復興拠点は来年春ごろまでの避難指示解除を目指し整備が進む。協議会は解除のための住民説明会を見据え、「帰還困難区域全域の避難指示解除や復興・再生についても住民から説明を求められる」とし、拠点外の方針を六月末までに示すよう二月二十六日に要請していたが、政府側は方向性すら示してこなかった。

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 復興拠点外の避難指示解除方針について、政府が六月末までの明示は困難としたのを受け、富岡、双葉、葛尾の三町村長も改めて早急な対応を求めた。

 宮本皓一富岡町長は「本格的な復興を目指す上で帰還困難区域の避難指示解除を先送りにしてはいけない」と指摘。伊沢史朗双葉町長は「復興拠点外の方向性を示すよう幾度となく国に求めてきただけに残念だ」と苦言を呈した。篠木弘葛尾村長は「与党の復興加速化本部が協議会の要望内容を方針に盛り込んでくれると考えている」と進展を望んだ。

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