総合南東北病院が移転へ 福島県郡山市 市内の福島県農業試験場跡地に
脳神経疾患研究所(渡辺一夫理事長)が福島県郡山市八山田で運営する総合南東北病院について市内富田町の県農業試験場跡地に移転、新築する計画を進めていることが分かった。移転時期の目標は2024(令和6)年4月。新病院整備により感染症への対応や双葉郡などからの救急搬送受け入れの態勢を強化する。建設計画地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接しており、地域の医療機器関連産業の集積化が進む見通しだ。
移転を計画しているのは総合南東北病院と管理棟で、県有地である県農業試験場跡地の約11.5ヘクタールのうち約6ヘクタールの敷地の使用を想定している。土地を取得するかについては今後検討する。脳神経疾患研究所は現在の461床を維持し、さらなる病床数の上積みも目指す。
新病院は通常医療と感染症医療を遮断させる構造にする。新型コロナウイルスをはじめ各種感染症に適切に対応できる環境を整える。県立ふたば医療センター(富岡町)からのドクターヘリの容易な迎え入れも可能にするようヘリポートも整備する。さらに県南地方などの救急医療要請の受け入れ対応を強化する。
災害に強い施設を造り避難所機能を持たせるほか、地域交流スペースなどを設置する構想もある。JR郡山富田駅の近くに立地することになるため来院患者の利便性向上にもつながるとみられる。総事業費は200億円程度を見込んでいる。脳神経疾患研究所は「感染症対応強化により医療崩壊を防ぐとともに、広域医療圏の救急対応機能をより充実させる」としている。
総合南東北病院は地域医療の中核病院の1つ。国内有数の放射線治療施設を持ち、最先端のがん治療の研究を進めている。現在は敷地約10ヘクタールに、同病院の他、南東北第二病院、管理棟、介護保健施設、がん陽子線治療センター、BNCT研究センターなどがある。
総合南東北病院は市道を挟み中央棟と北棟に分かれている。中央棟は1981(昭和56)年に開院し、老朽化のため建て替えを検討していた。ただ、敷地内での建て替えは工期が長期化する上、コストの増加が懸念されていた。新型コロナウイルス感染拡大を契機に、さまざまな感染症の拡大を防ぐハード面の整備が必要と判断し、移転新築に方針を転換した。今後第二病院やがん陽子線治療センターなどの移転も検討するが、研究センターなどは現在の敷地に残す方針。
県農業試験場跡地は開発が制限される市街化調整区域内にある。2016(平成28)年に開所したふくしま医療機器開発支援センターを中核として医療機器産業集積を進める市などの「メディカルヒルズ郡山基本構想」に沿った地区計画を策定することで建設が可能になる。