【かすむ復興五輪】福島の現状どう伝える アピールの形模索

 

 「復興五輪」を大会理念に掲げた東京五輪の開幕が迫る中、全競技のトップを切り21日から福島市の福島県営あづま球場で始まる野球・ソフトボール競技の全7試合は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客開催になった。関連事業も相次いで中止され、国内外から本県を訪れる観光客らは大幅に減る見込みだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの再起を国内外に発信する機会が失われ、関係者は支援への感謝や本県の現状を伝えようと手探りで対応を模索している。

 開幕まで残り10日となった13日、平沢勝栄復興相(福島高出身)は閣議後会見で「コロナで復興五輪が陰の方に行ってしまった。本当に残念」と苦渋の表情で語った一方で「大会が行われる以上は復興五輪を理解してもらう」と続けた。国内外の報道関係者が集まるプレスセンターで、本県を含めた被災地のスライド上映などを通じて復興支援への感謝などを伝える。

 東京湾を臨む東京・晴海では13日、各国の選手や関係者らが最大1万8000人滞在できる選手村が開村した。新型コロナ感染拡大防止のため、恒例の入村式などは行わず、静かな初日となった。

 選手村の食堂では本県などの農産物を活用したメニューが提供され、食材の産地も表示される。世界各国の選手が福島県産の農産物を食べることで、食材の安全・安心、おいしさの理解促進につながると期待される。

 本来なら競技観戦のため福島県に来た観客や観光客らに直接、県産農産物を食べてもらう機会が提供されるはずだった。福島県は試合に合わせ、あづま球場周辺で福島県産品の販売や振る舞い、伝統文化の披露などを予定していたが軒並み中止を余儀なくされた。内堀雅雄知事は12日の定例記者会見で「復興五輪として発信する手だては相当失われた」と述べ、感染再拡大による状況変化を嘆いた。

 県はあづま球場での野球・ソフトボールに合わせて24の国・地域の駐日大使らを招く予定だったが、取りやめた。果物王国ふくしまを象徴するモモなどの県産農産物を実際に食べてもらい、品質の高さや安全性を直接訴える考えだった。

 「福島の果物をPRできる絶好の機会と期待していただけに悔しい」。福島市飯坂町のあづま果樹園の吾妻一夫社長(73)は肩を落とす。それでも新型コロナ収束後を見据え「大勢の観光客に味わってもらえるよう今後も丹精込めておいしい果物を作る」と前を向く。

 東京大会で本県をPRできる機会は、選手村での県産食材提供のほか、県産トルコギキョウが使われるメダリストへの花束「ビクトリーブーケ」の贈呈、大会施設での県産水素エネルギーの活用などが挙げられる。

 丸川珠代五輪相は13日の記者会見で、あづま球場の無観客開催について「非常に残念だが、復興を成し遂げつつある姿を、大会を通じ引き続き世界に発信したい」と述べた。政府や組織委による取り組みが強化され、復興五輪として本県などの情報が国内外に広く伝わるのを福島県内の関係者は願っている。

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