先手必勝で訪日客獲得へ 福島県が10月にも欧米に現地窓口 コロナ収束見据え

 
 福島県は新型コロナウイルスの収束後を見据え、インバウンド(訪日外国人客)の誘客強化に乗り出す。10月にも新たに米国、オーストラリア、英国、フランス、スペインに現地窓口を設置する。各国で旅行関係の商談会に参加するほか、復興の現状、観光資源の魅力を発信する。近隣県に先駆けて欧米に拠点を設け、早い段階から新規旅行客獲得に取り組むことで福島県の観光回復につなげる。

 県は2016(平成28)年10月、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生後のインバウンド誘客や県産農産物の風評解消などを目的に海外の現地窓口を台湾、タイ、ベトナムの3カ国に初めて設置した。

 3カ国のインバウンド宿泊者数は、設置前の2015年とコロナ禍前の2019年を比べると、台湾は約5倍の5万8260人、タイは約14倍の2万5420人、ベトナムは約12倍の1万3420人と右肩上がりに増えた。県観光交流課の担当者は「いずれも窓口設置の効果があった」と手応えを口にする。

 ただ、福島県に隣接する宮城、山形両県や北関東地方の各県も東南アジアなどに現地窓口を設けている。福島県はアフターコロナのインバウンド誘客で先手を取るため、年々旅行客が増加傾向にあり、ワクチン接種やワクチンパスポートなども進んでいる欧米5カ国への設置を決めた。

 現地窓口の業務は、海外か日本に本社または支社がある観光関係会社に委託する。委託業者を通して現地のニーズ調査、旅行商品の開発や商談会での売り込み、福島県の復興状況や観光資源の発信に取り組む。観光資源では欧米で人気の高い日本の食文化や歴史、自然などをアピールする。現地での会員制交流サイト(SNS)を活用したPR作戦も展開する。

 福島市土湯温泉の山水荘の渡辺いづみ専務(61)は「現地窓口の設置はコロナ収束後のインバウンド誘客に期待が持てる。旅館側としても、それまでに受け入れ体制を整えたい」と話した。

 新型コロナ感染拡大で2020(令和2)年度の県内の観光客入り込み数は3619万人となり、震災と原発事故の発生した2011(平成23)年と同水準まで落ち込んだ。県観光交流課の担当者は「本県を目的地に選んでもらえるよう、コロナ収束前から積極的にPRする」としている。

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