震災の記憶と共に描く いわきの現代美術家 吉田重信さん

 いわき市の吉田重信さん(62)は現代美術家として東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、絵画を通じて風化を防ぐ活動に尽力してきた。「自分たちの宿命を受け入れ、この土地で生きていく覚悟を伝えたい」。いまだ避難が続く浜通りの被災者に心を寄せ続ける。 

 震災と原発事故後、物流が止まった市内にがくぜんとした。妻とともに避難を考えたが、自ら営んでいる自動車整備の仕事のため、離れたのは事故直後の十日間程度。その間、約四十年の営業に幕を下ろす京都のギャラリーへ立ち寄った。最後の作家として個展を依頼されていたためだ。 

 震災前から世界情勢や世の中の流れと向き合い、作品に時代を投影してきた。京都のギャラリーでは「臨済の光」というタイトルで、室内に白菊を敷き詰めた。段差をつけて津波を表現、奥には赤い光をともし近づけない原発を再現した。 

 その後も自分自身が震災を忘れないよう、個展のたびに新作を手掛けた。いわき市の新舞子海岸の砂を素材にした作品もその一つという。「犠牲者、生きている人、それぞれの思いを感じてほしい」と考えている。 

 市内で三年ぶりとなる個展「分水霊2021」を二月末まで開いた。漆で布を真っ赤に染めた「分水霊」は二〇一二(平成二十四)年から取り組んでいるテーマだ。「美しさも恐ろしさも表裏一体。忘れないために描き続ける」と誓う。震災後、多くの新しい出会いに恵まれた。作品が未来につながる懸け橋となるよう期待している。 

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