夢見た帰郷、復興へ一歩 福島県葛尾村野行地区の避難解除 出荷の日待ちわびる農家

 

自宅の畑に植えられたブルーベリーの木を眺め、出荷への思いを強くする金谷さん

 

2022/06/12 17:58

 

 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の福島県葛尾村野行地区の避難指示が12日に解除され、住民は地域の復興に向け新たな一歩を踏み出すと誓う。同県三春町に避難する元副村長金谷喜一さん(70)は、古里で栽培しているブルーベリーを出荷できる日を待ちわびる。初の収穫直前に起きた原発事故で、いまだ夢はかなっていない。「いつか多くの人に食べてもらいたい」。小さな果実を見つめ、人々の笑顔あふれる古里の未来を思い描く。

 拠点内にある金谷さんの自宅には約15アールのブルーベリー畑が広がる。初の収穫を目前に控えていた2011(平成23)年に長期間にわたる避難生活が始まった。

 翌年の2012年に一時帰宅した際、初めて少量を収穫できた。検査では放射性物質は検出されず食べても問題ないとされたが、販売や出荷はできなかった。もどかしさ、やるせなさが募った。

 金谷さんは野行地区で生まれ育った。現在は三春町に建てた家に避難を続けるが、古里を愛する気持ちは変わらない。再び生活できる日を夢見て、避難生活で傷んだ葛尾村の自宅を3年ほど前にリフォームした。

 ただ、三春町に生活の拠点を移してから6年。現在は近くに住む長男家族のサポートとして孫の世話などをしている。避難指示解除後も当面は三春町で生活しつつ、月の半分は村に戻る二地域居住を選択するつもりだ。

 ブルーベリーの成長を見るにつれて村内で再び暮らしたいという思いは強まる。今年夏から本格的に収穫を始め、まずは家族や親戚など身近な人に配りたいと考えている。「いつかはこの実を広く出荷して大勢の人に味わってほしい」。帰還した人々の笑顔を思い浮かべながら、その時を待つ。

 

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