歴史ある磐東線小川郷駅舎「次世代へ残したい」 建て替え計画に住民 福島県いわき市
小川郷駅に本棚を置き、駅舎を活気付けてきた草野さん
2022/08/15 21:03
JR東日本は、福島県いわき市のJR磐越東線小川郷駅の老朽化に伴い、現在の駅舎を取り壊して新築する方針を示している。開設から100年以上が経過し、当時の姿を残す木造駅舎は珍しく、鉄道愛好家らが多く訪れている。ボランティアで駅のにぎわいづくりを進めてきた周辺住民からは「東日本大震災も乗り越えた。住民の憩いの場として残してほしい」と現在の駅舎の存続を願う声が上がっている。
小川郷駅は1915(大正4)年に開業した。時代の流れとともに利用客は減り、1989(平成元)年に無人駅となった。小川町で生まれ育った草野充宏さん(65)は「通学などで当たり前に利用してきたが、活気が失われて初めて、その大切さに気付いた」と振り返る。荒れていく駅舎を目の当たりにし、地元の有志を募って「小川郷駅を明るくする会」を立ち上げた。
季節ごとに駅を七夕飾りやイルミネーションで彩り、景観を維持しようと毎月1回の清掃も始めた。駅舎に本棚を設置し、利用客が待ち時間に本を読めるようにした。地元の小中学校と連携しながら、駅を中心にした地域の活性化を進めてきた。2006年に「小川郷の会」と名称を変更した。
JR東日本は今年4月に関係者を対象に説明会を開き、建て替えの計画が示された。同仙台支社によると、具体的な日程や詳細は未定という。草野さんは「あのとき、残せば良かったと思う時が来るはず。古里の大切な光景を守り、次世代に残すために活動を続けていきたい」と話している。