「教訓を後世へ」模索続く 学芸員瀬戸真之さん 福島県双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」開館2年
収集した資料を見つめる瀬戸さん。震災と原発事故の教訓を次世代に継承する決意を示す
2022/09/15 21:19
福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館は20日で開館から2年を迎える。事業課長代理で学芸員の瀬戸真之さん(46)は企画展や展示内容を考える屋台骨として施設を支えている。記憶の風化が懸念される中、「未曽有の震災と原発事故の教訓を後世に伝え続ける」との決意を胸に刻む。
2階の作業室。楢葉町の海岸で見つかったアルバムやヘルメットなどの漂流物が並ぶ。「どう展示すれば教訓が伝わるのか」。展示内容の充実に向け、瀬戸さんの模索は続く。
福島大の准教授として防災などを研究していた2017(平成29)年、県の委託で伝承館に展示する資料を集め始めた。約2年間の活動を通じ「教訓を次世代に伝えたい」との思いが強まり、伝承館職員となった。
開館後、「被災地の実態が伝わりにくい」など厳しい声も寄せられた。展示物を随時変えるなど、伝承の在り方を考え続けている。
避難生活を送る住民のノートや手紙の展示が増えてきた。「経験した人にしか分からない苦しみがある。まだ復興途上だと伝えることが大切だと思う」と被災者の声を大切にしている。
震災を知らない次世代への継承を意識し、起震車の試乗、津波の仕組みを学ぶ模型など体験型の企画を設けた。来館する子どもたちに目を向け、「幅広い世代が震災と原発事故に向き合えるような施設を目指す」と誓った。