地域の防災力向上へ奔走 震災・原子力災害伝承館の葛西さん 福島県浪江町に移住
地域の防災力向上に取り組む葛西さん
2022/10/26 09:11
東日本大震災・原子力災害伝承館の常任研究員葛西優香さん(36)は福島県浪江町に移住し、地域の防災力向上に取り組んでいる。町や住民とともに自主防災組織の設立に向けた活動などに奔走している。近年、各地で大規模災害が頻発し、防災の在り方が問われる中、「住民と一緒になって、誰もが安心して暮らせるまちをつくっていきたい」と決意する。
伝承館の一室で、4月から常任研究員となった葛西さんが研究に励む。東京大大学院に通う傍ら、「震災は地域や住民、防災にどう影響したのか」などの課題に向き合う。
大阪府出身。小学2年生のときに阪神淡路大震災を経験した。物が倒れて自宅のドアがふさがれた。母が窓ガラスを割り、はだしで必死に脱出する中、近所の住民に渡された靴下に人のぬくもりを感じた。東日本大震災は東京で被災した。勤務先の上司がパニックになる姿を目にし、「災害には周囲との協力が必要だ」と実感した。「自らの防災の考えを伝えたい」と考え、防災士の資格を取得した。
2017(平成29)年に浪江町を初めて訪れた。一部避難指示が解除され、住民が町内に帰り始めたばかりのまちに、「どうやって防災力を高めていくのだろう」と関心を抱いた。同時に「まちの力になりたい」との意欲が芽生えた。東京都からの移住の機会をうかがい、昨年11月から暮らし始めた。
現在、町内の一部地区の自主防災組織立ち上げを目指し、住民に聞き取り調査をしている。「震災のときはどう避難したか」「まちを離れたときはどういう思いだったか」。住民の実態を把握し、最適な組織を作り上げる考えだ。
「防災力向上には住民それぞれの考えや環境について相互に理解し合うのが大切。いざというときに住民同士が協力し合えるまちとなるよう手助けしたい」と固く誓う。