【いわきFC J2での挑戦】(下)戦力の底上げ重要 クラブ運営、強化不可欠
走力などで圧倒し、J2昇格を成し遂げたいわきFCイレブン。来季は県内初のJ2舞台に挑む=6日、広野町のJヴィレッジスタジアム
2022/11/10 10:03
サッカーJ3参入1年目でJ2昇格を決めたいわきFCの快進撃は、若い選手の成長を促した首脳陣の手腕によるところが大きい。今季から指揮を執った村主博正監督(46)は、練習からフィジカル強化とハードワークの意識を選手に浸透させた。戦術面では「テンポの速いコンパクトなサッカー」を徹底し、得点力アップにつなげた。
今季は後半や終盤での得点が目立った。いわきが挙げた69得点のうち7割を後半に決めた。今季からスプリントコーチを務める元陸上選手の秋本真吾さん(40)=大熊町出身=は「ほとんどの選手の足が速くなり、昨季より1試合で走る距離は伸びている」と分析する。正しい走り方を学ぶことで、選手に最後まで走り負けしない力が備わった。
試合数がJ3の34試合から42試合に増えるJ2には強豪がひしめき、競争は一層激しさを増す。J1サンフレッチェ広島やJ3福島ユナイテッドFC(福島U)などでプレーした茂木弘人さん(38)=郡山市=は「J2はJ3より1段も2段もレベルが高い。個々のレベルアップが必要」と指摘する。来季、いわきは現在のメンバーを中心に、若手を補強・育成しながら戦う方針だが、今後はユースからトップチームに上がる選手を育てるなど戦力の底上げが求められる。
昇格後はチームの運営経費が増えるため、クラブ運営の強化も課題だ。Jリーグが公開している決算情報によると、2021(令和3)年度の主なクラブの経営状況は、営業収益やスポンサー収入、人件費などの規模を比較すると、いわきはJ2平均のおよそ3分の1となっており、新たな収入の確保が不可欠となる。
いわきFCを運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長(53)は「J1を目指して戦い続けるのはハードルが高いが、お金が全てとは考えていない。(スタジアム整備など)行政と足並みをそろえつつ、今後のクラブの目標を明確にする」と語った。
来季のJ2は、戦力も資金規模も上回る清水エスパルスやジュビロ磐田などとの厳しい対戦が待ち構えている。歴史の浅いクラブが躍進を続けるためには地域と力を合わせ、「オールいわき」で戦えるかが鍵となる。