W杯戦士の信頼厚く 福島民報スポーツ大賞特別賞 西芳照さん 経験、食育に生かす

 

日本代表の活躍を報じる福島民報を手にし、笑顔を見せる西さん

 

2022/12/25 09:40

 

 福島民報スポーツ大賞特別賞の受賞が決まったサッカー日本代表専属シェフの西芳照さん(60)は24日、福島民報社の取材に、ワールドカップ(W杯)カタール大会で世界の強豪を破った選手らの熱い思いを明かした。5大会にわたり、選手と信頼関係を築き、激戦を戦い抜く選手を後押ししてきた。サムライブルーの躍進を支えた名料理人は「選手との交流で得た経験を生かし、食の大切さを子どもたちに伝えたい」と抱負を語った。

 「苦労も多かったが、選手から『おいしかった』『西さんの料理のおかげで勝てた』などの言葉をもらえた」。日本代表の活躍を報じる福島民報の紙面に目を通した西さんは充実した表情を見せた。

 今大会は国内から持ち込めた食材の量が少なく、多くの食材を現地の日本食マーケットで仕入れた。イスラム圏のカタールでは豚肉は購入も持ち込みもできず、定番メニューのハンバーグは牛肉100%のレシピに変えた。小麦粉を含む食品を食べない「グルテンフリー」にこだわる選手もおり、同じメニューでも小麦粉を他の食材で代用し調理するなど工夫を凝らした。

 「食堂ではベテラン選手が中心となり、明るい雰囲気をつくっていた。海外でプレーする選手が多く、試合前でも驚くほど落ち着いていた」と印象を語った。クロアチア戦に敗れた後は、食卓で一言も言葉を発することなく肩を落とす選手の姿を目の当たりにした。「過去の16強の時は、どこかやりきった雰囲気があったが今回は違った。本気で8強入りを目指し、その力があったからこその悔しがり方だった」と明かした。

 西さんは今後、小中学生らを対象とした食育事業に力を注ぐ。来年2月には、富岡町の富岡中の生徒に栄養バランスの取れた食事の大切さなどを講演する予定だ。「代表選手がいかに食事を重要視しているかなどを伝えたい」と話す。

 経営するレストランには、県内外から弟子入りを希望する問い合わせが相次いでいる。「栄養学などをしっかりと学んだ料理人を育成したい」と後進の指導にも取り組む考えだ。

 西さんはパリ五輪を目指す世代の食事をサポートすることが決まっている。信頼する森保一監督(54)の続投確実のニュースを受け「引き続き監督を務めるのはうれしい。もし森保さんから要請を受けることがあれば、次のW杯への同行も考えたい」と語った。W杯後はA代表専属シェフの引退を公言していたが、2026(令和8)年に開催される北中米大会への意欲ものぞかせた。

 西さんは、大学入学を目指し、都内で浪人中だった19歳の時に飲食店でアルバイトしたことがきっかけで、料理人の道に進んだ。「日本代表のシェフになるなんて、当時の自分では想像もできなかったと思う」と歩みを振り返る。「スポーツ大賞特別賞という栄誉を頂けることは光栄。若い頃の自分に、大変だけどそのまま努力を続けろよと言ってやりたい」と笑みをこぼした。

 

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