コーヒー香る夢の場所 「明るい街に」願い込め喫茶店オープン 福島県南相馬市出身の鈴木健さん

 

カウンター越しに会話を楽しむ鈴木さん(左)と横山さん

 

2023/03/09 10:51

 

 

 福島県相双地方を中心にコーヒー豆の移動販売などを手がける相馬市の鈴木健さん(54)はコロナ禍で休業した南相馬市原町区の店舗で喫茶店の営業を始めた。25年ほど前からコーヒーに魅了され、販売を夢見てきた。事業開始を考え始めた頃、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生。地域の人口が大幅に減ったことなどを受け断念した。震災から12年。4月末までの試験的な運営となるが、ようやくたどり着いた夢の舞台だ。カウンター越しに自慢のコーヒーを提供する。

 鈴木さんは南相馬市出身。28歳の時、複雑で味わい深いコーヒーに魅了された。インターネットで県内の特産品を扱う事業を手がけており、コーヒー豆も商品として扱いたいと考えていた。しかし原発事故に伴う風評などの影響から事業の売り上げは激減。コーヒーに関する事業は一時諦めた。

 その後はNPO法人などに勤務し、生計を立てた。コーヒーの焙煎は仕事の傍ら続けた。器具や火の入り方の違いでどう深い味わいになるか探究した。震災や原発事故で一度くじかれたコーヒーへの思いだったが、日々大きくなっていった。

 時が流れるにつれて新しい街並みができ、人の流れは徐々に戻ってきた。2016(平成28)年ごろにコーヒー豆の卸売業を開始。その2年後からは移動販売を始め県内各地のイベントに出店し、魅力を発信した。

 新型コロナウイルス感染拡大という大きな壁も立ちはだかった。イベントが減少する中、直売所などに商品を置くなど地道に努力を重ねてきた。

 市内原町区の串焼き専門店「串焼きアンカー」がコロナ禍などを背景に休業し、店を試験的に事業を展開したい人のために貸し出していると昨年10月に知った。店主の横山雄保さん(65)に連絡し、短期の店舗型営業を決めた。

 5月以降は試験営業の結果を踏まえて事業展開の方法を探る。「震災で一度落ち込んだ街。コーヒーを通じて震災前より明るくなればうれしい」。夢は広がっていく。

 

■金曜から日曜 4月末まで営業

 鈴木健さんの「CUSTOM COFFEE(カスタムコーヒー)」は4月30日まで営業している。営業時間は金曜、土曜、日曜の午前11時から午後5時まで。マシンドリップ、ハンドドリップの各種コーヒーのほか、コーヒー豆も販売している。

 住所は南相馬市原町区錦町2丁目70の1。

 

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