GWへ復旧徐々に 相馬・松川浦 福島県沖地震で被災の宿泊施設 営業再開「ようやく」

 

再開の喜びをかみしめる坂本さん

 

2023/04/19 09:22

 

修繕が終わった施設を眺め、再開の喜びをかみしめる坂本さん

 

修繕した箇所を見つめ、再開を喜ぶ坂本さん

 

 福島県沖を震源とする昨年3月の最大震度6強の地震で、多くが被災した相馬市松川浦の宿泊施設では、書き入れ時の大型連休を前に営業再開の動きが少しずつ進んでいる。「ようやく宿泊客を迎えられた」。修繕を終えて今月上旬に再開したホテルは戻りつつある客足に安堵しつつ、地域のにぎわいの回復を期す。連休までに間合わなかった宿も常連らの励ましを力に、復旧の日を待つ。

 

 太平洋と松川浦大橋を眺められる大浴場や地元の魚介類、肉、野菜を使った料理が自慢のホテル「なぎさの奏夕鶴」は昨年3月の地震で全館休業を余儀なくされた。屋根の補修やクロスの張り替えが終わり、4月7日に約1年ぶりに営業を再開した。

 「目も当てられない状況だった」。おかみの坂本浩子さん(66)は地震直後を振り返る。玄関の屋根は落ち、壊れた配水管からの漏水で客室は水浸しになった。グループ補助金を活用し、昨年9月に修復工事を始めた。当初は同年12月の完了を見込んだが、工事の過程で別の被害が見つかるなどして工期が延びた。

 坂本さんは不安を抱えながらも再開を見越して準備を進めた。県外の人気観光地の宿泊施設を視察し、客の満足度を高められるようなもてなしを学んだ。新たな従業員を迎えたほか、浴衣や備品、パンフレットを新調し、インターネットでの予約受け入れを強化するなど手を尽くした。

 再開から10日ほど過ぎたが、食事出しのタイミングがずれるなど改善点は日々見つかる。それでも、休館中の不安な気持ちを思えば「毎日の疲れさえも心地いい」と充実感に浸る。大型連休中は関東圏からの予約が伸び、3、4の両日は満室となった。旅行需要の回復を感じている。ただ、松川浦全体をみれば以前の活気は戻っていないと感じる。「再開する宿が増え、地域全体が盛り上がればいい」と願っている。

 

■作業員不足、工事遅れも 半数近く休業続く

 相馬市観光協会によると、ホテルや旅館、民宿など松川浦周辺にある宿泊施設25施設のうち、18日現在で13施設が営業している。半数近くが休業を続けているが、連休明けの5月中旬に再開を予定している施設もある。

 「旅館かんのや」は連休前の宿泊客の受け入れ再開を目指したが、間に合わなかった。代表の管野拓雄さん(64)は「ゴールデンウイークは夏休みや年末年始に並ぶ書き入れ時だったが…」とため息をつく。

 昨年3月の地震被害は東日本大震災や2021(令和3)年2月の本県沖地震よりも大きく、外壁や配水管、エレベーターなどが損壊した。すぐに修理業者を手配したものの、市内外の一般住宅の修繕需要もあるため、作業員が足りなかった。収入がない中、日々の生活費や施設維持費で蓄えが削られ、焦りが募った。

 3月には修繕が済んだ大広間を使い、宴会の受け入れを始めた。残る工事も5月中旬には終わる見込みという。県内外の常連客からは「再開したら泊まりに行きたい」と励ましの連絡が入る。管野さんは「待っていてくれるお客さんのためにも、受け入れ態勢を早く整えたい」と前を向いた。

 

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