開設1年、販売開始に向け日々挑戦 バナメイエビ陸上養殖 イベントや学校給食に提供 福島県葛尾村
販売開始に向けて意気込む松延社長
2023/06/06 10:27
株式会社「HANERU(はねる)葛尾」が昨春、食用バナメイエビの陸上養殖工場を福島県の葛尾村産業団地に開設し、1年余りが経過した。放流した稚エビが育ち、イベントや学校給食に提供されるなど事業は軌道に乗り始めた。2025(令和7)年4月の販売開始を目指して挑戦が続く。
これまで多くの失敗を乗り越えてきた。人工海水の成分調整や水の浄化処理がうまくいかず、昨年は2度、稚エビが全滅してしまった。松延紀至社長の頭には閉業もよぎったが「村の人たちがおいしいエビを待っている」と改良を続けた。
昨年9月から天然の海水で育てたエビは無事、4カ月後に出荷サイズまで育った。同12月から再び人工海水に切り替えて養殖し、成功。合わせて約6300匹の収量があり、イベントや給食で地域住民に味わってもらえた。
県内の学校との連携も始めた。昨年度は小名浜海星高と共同研究を行った。生徒がエビを育て、適切な育成条件を調べた。今年度は郡山女子大の学生に若い感性を生かしたレシピを考えてもらっている。将来的には、通販などでエビとともにレシピ本を同封したいと考えている。
工場はこれまで、2棟で実験や育成を行ってきた。今年度中に新たな施設を開設予定で、養殖の規模が現在の約10倍になる。収量や質を安定させ、2025年4月には全国へ年間42トン(約210万匹)を出荷するのが目標だ。販路獲得に向け、今から県内外の飲食店やホテルにエビを売り込んでいる。松延社長は「エビを通して村に注目してもらうのはもちろん、雇用や養殖関連企業の誘致で地域に活力を与えたい」と決意をにじませた。