福島県立大野病院の後継病院、双葉郡8町村にない診療科 人工透析や産婦人科開設 県が方針

 

2023/06/13 09:43

 

 東京電力福島第1原発事故の影響で休止している福島県立大野病院(大熊町)の後継病院について、福島県は双葉郡8町村の医療機関にない人工透析(腎臓内科)や産婦人科を設ける方針を固めた。透析患者や妊産婦はいわき市、南相馬市などへの通院を余儀なくされ、帰還をためらう一因にもなっている。診療科を全20科とするなど医療環境を整え、帰還促進や移住者増加につなげる。開院時の入院病床数は100床前後とし、人口動向などを踏まえて段階的に250床前後まで増やす計画だ。12日、福島市で開いた検討会議で示した。

 

 福島県は郡内の医療の需給状態や住民の高齢化、若者の帰還や移住の状況などを考慮し、後継病院では透析患者や妊産婦に寄り添う医療を提供する必要があると判断した。産婦人科は妊産婦健診など外来診療のみに対応し、分娩(ぶんべん)は相馬地域やいわき市などの医療機関と連携して対応する方針。

 原発事故発生時、大野病院には内科、消化器内科、呼吸器科、外科、整形外科、眼科、小児科、麻酔科、泌尿器科の計9科を設けていた。後継病院には皮膚科や耳鼻咽喉科、精神科など従来はなかった診療科を加え、地域医療の中核を担う病院と位置付ける。検討会議に臨んだ吉田淳大熊町長は「双葉郡の復興状況は町村ごとに異なる。時間の経過とともに医療ニーズも変化するので、柔軟に対応してほしい」と求めた。

 開院時に入院患者を受け入れる診療科は内科や外科、整形外科を軸に検討している。双葉地方町村議会議長会長の吉岡健太郎大熊町議会議長は「医師や看護師を確保できるのか」とただした。これに対し、県病院経営課の担当者は「現時点で具体的に何人が確保されている、ということではない。今後、関係機関と連携を密にしながら対応していきたい」と説明した。

 検討会議は県や双葉地方町村会、双葉郡医師会、福島医大などでつくる。次回は8月ごろに開き、後継病院の設置場所や開院時期などを協議する予定。

 

■大野病院の後継病院に開設が想定されている診療科

双葉郡にある診療科=14科

内科(循環器、消化器、呼吸器)、総合診療科、外科、整形外科、脳神経外科、救急科、眼科、小児科、精神科、麻酔科、放射線科、リハビリテーション科

双葉郡にない診療科=6科

内科(糖尿病)、泌尿器科、皮膚科、耳鼻咽喉科、産婦人科、人工透析(腎臓内科)

 

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