IAEA処理水報告書 安全性のお墨付き、安心につながるか 「風評の心配拭えず」 福島県民、理解醸成の努力求める

 

福島県沖などで水揚げされた魚介類が並ぶ鮮魚店。漁業関係者や消費者の心境は複雑だ=4日午後、いわき市

 

2023/07/05 09:19

 

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、国際原子力機関(IAEA)が「(放出計画は)国際的な安全基準に合致する」との包括報告書を政府に提出した4日、県民からは「報告書の内容が正しく国民に伝わり、安心につながるのか」と懸念する声が上がった。風評が起きないよう、安全性についての理解を得るさらなる努力を政府に求めた。

 福島県いわき市で鮮魚店「魚ふじ」を営む渡辺至さん(72)は、処理水の放出に反対の立場だ。包括報告書によってIAEAの「お墨付き」を受けた形だが、「安全と評価されても風評が起きる心配は拭えない」とみる。原発事故発生後、若い世代を中心に県産の魚介類を敬遠する動きが増えたと感じている。「放出には反対。末端に位置する鮮魚店にとっては死活問題だ」と語気を強めた。

 いわき市の別の鮮魚店にはこの日、地元産をはじめ新鮮な魚介類が所狭しと並んだ。客の50代女性は、理解が広がらないまま処理水が放出されれば「幼い子どもがいる人は、購入するのをためらってしまうかもしれない」と打ち明けた。

 友人といわき市の四倉海岸を訪れていた市内の接客業、岡村優さん(33)は報告書の内容について「(国や東電は)理解を得る努力を続けてほしい」と要望した。

 福島市の学法福島高3年の清野涼ノ心さん(17)は、同級生や友人との間で処理水を話題にすることはないという。「身のまわりの若者は処理水にあまり関心を持っていないようだ。いざ放出になっても実感が湧かない」と話した。

 政府は今後、具体的な放出時期を模索するとみられる。会津若松市の会津大に通う男性(20)は、放出に反対している国や地域が反発し、県内産を含む食品の輸入規制を維持するのではないかと危惧している。「国内外の十分な理解醸成を優先した方がいいのではないか」と指摘した。

 一方、IAEAの評価を受け、処理水の海洋放出を受け入れるのはやむを得ないとの声も出た。

 双葉町で小売店を営む伊藤拓未さん(33)は「IAEAから安全性を認められたので、(放出は)仕方がない」との考えを述べた。ただ、県民の理解を得た上で海に流すのが重要と訴え「国と東電は努力を続け安全に作業をしてほしい。トラブルが起きないよう、放出設備の点検も徹底すべきだ」と注文した。

 

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