静寂の校舎、災禍伝える 黒板の文字も当時のまま 福島県双葉町・双葉南小ルポ
震災遺構としての活用を視野に検討が進む双葉南小
2023/08/31 10:14
持ち主を待つように並ぶランドセル
書籍が散らばったままの研修室
東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されてから30日で1年となった。地域再生のつち音が響く一方、いまだ東日本大震災と原発事故発生当時と変わらない場所もある。双葉南小もその一つだ。ひっそりとたたずむ校舎に子どもたちの姿はない。町は校舎を震災遺構として活用することを視野に検討を進めている。町職員の案内で施設内を取材した。(福島民報社勿来支局長・遠藤洵)
静まりかえった校舎に入る。想像していたよりきれいな印象を受けた。震災当時、避難所として使われなかったからだという。玄関近くの職員室にはマグカップなどが残り、黒板には3月11日の日付と卒業式に向けた日程が書き込まれたままだ。教室にはランドセルなど子どもたちの私物がきれいに並べられていた。誰の物か分かるように整理したのだという。持ち主が迎えに来てくれるのを待っているかのように感じた。
図書室は雨漏りがひどく、所々の床がぬかるんでいた。教材などを保管する研修室は書籍が散らばり、足の踏み場もない。見学の申し込みがあるため、震災と原発事故発生当時の様子をパネルにして校舎内に掲示してあった。体育館は大きな損傷はないように見えたが、今後解体される予定だという。
かつてここに子どもたちの元気な姿があったのだと考えると、別の世界に入り込んでしまったような感覚になった。漂うカビの臭いに12年半の時の流れを実感した。震災遺構として活用されるなら、震災と原発事故の教訓に加え、過ぎ去った「時間」を伝えることも大切な役割になるだろう。
外に出ると敷地内にある国指定史跡「清戸廹(さく)横穴」へと続く階段や史跡を紹介する看板が目に付いた。町は校舎の公開と合わせ、町の歴史を感じさせる史跡の利活用法も探っていく。