能登の中学生と語り合いの場を 福島県の教訓伝える 震災・原子力災害伝承館の葛西さんに聞く

 

福島の子どもたちの経験が生かされる時が来るとして、語り合いの場を提案する葛西さん

 

2024/02/05 09:12

 

 能登半島地震は発生から1カ月余が過ぎた。福島県の防災を研究している東日本大震災・原子力災害伝承館の常任研究員、葛西優香さん(37)は石川県の珠洲、輪島、能登3市町で実施している集団避難の中学生に心を寄せる。「13年前、避難を余儀なくされた福島の経験、教訓が生かされる時が来る」として、能登の中学生と県民の語り合いの場をつくっていく考えを示す。

 ―能登半島地震の現状をどう見るか。

 「復旧に向け、多くの人が懸命に活動している。一方で、集団避難した中学生の心のサポートが今後、必要になる。子どもから大人になる時期、いろいろな思いを心に抱えている。親に心配をかけたくないと、頑張ろうという思いを強くしているはず。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難した小学生や中学生は現在、大学生や社会人になっている。受験を終え、集団避難が落ち着いたら、対話や交流の場など、福島の教訓を伝えられるような体制を構築したい」

 ―29年前、阪神大震災で被災し、現在は福島で研究活動している。

 「阪神大震災、東日本大震災、能登半島地震は共通する部分もあるが、起きた日時や状況が違う。災害関連死が出ていることや、物資が行き届かないという報道を見聞きすると、防災を研究する立場として反省する。家屋の倒壊が多く、国を挙げて取り組まなければならない問題だ。今後、首都直下とか南海トラフが想定される中、早急に対策していかなければならない」

 ―福島で研究しているテーマは。

 「浪江町に移り住み、『災害時に生きるコミュニティー』について実践しながら研究している。地域住民のよりどころとなっている神社の再建、神楽の復活、盆踊りの再開などを通し、帰還した住民、新たに移住した人たちがコミュニティーを作っている。その中から、共に支え合う意識という思いから防災の意識が芽生え、自主防災組織を作る動きが出ている。いろいろな形のコミュニティーがある中、浪江町では無理のない形で新しいコミュニティーが構築されている」

 

 略歴

 かさい・ゆうか 大阪府出身。同志社大卒業後、東京で株式会社いのちとぶんか社(旧:株式会社百年防災社)を設立した。2021(令和3)年10月に浪江町に移住。2022年4月、東日本大震災・原子力災害伝承館の常任研究員に就いた。東京大大学院学際情報学府学際情報学専攻博士課程に所属している。

 

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