東日本大震災の津波で不明…娘を思い海に花束 新潟県の渡辺さん夫婦、福島県南相馬市に通い続ける

 

「ちーちゃんに届け」と海に花を投げ入れる渡辺さん夫婦

 

2024/03/12 10:01

 

 東日本大震災の発生から毎月11日に新潟県上越市から福島県南相馬市を訪れている渡辺稔さん(77)、喜久枝さん(74)夫婦は11日、津波で行方不明になった長女の高田(旧姓渡辺)千鶴さん=当時(32)=を思い、海に花を投げ入れた。

 「ちーちゃんに届け」。渡辺さん夫婦は11日午後2時46分、白波が立つ南相馬市原町区雫の海に花を投じた。千鶴さんの中学校からの親友が毎年、自宅に届けてくれる花束だ。

 上越市の看護師だった千鶴さんは南相馬市出身の会社員と結婚。夫の転勤で、2010(平成22)年10月に南相馬市に引っ越した。震災発生時、千鶴さんは義母、義祖母と一緒に海岸から400メートルほどの自宅にいたとみられる。

 渡辺さん夫婦は「早く見つけてあげたい」と通い続けてきた。13年間、毎月11日の早朝に上越市の自宅を出発し約7時間かけて車を走らせる。元日に起きた能登半島地震で上越市に津波警報が出された。自宅が海岸から近く、避難所に身を寄せた。千鶴さんを思い出され、胸が締め付けられた。

 5年前、南相馬市原町区雫の墓のそばにソメイヨシノの苗木を植えた。千鶴さんの中学入学を記念し、上越市の自宅に植えた木の根が分かれて生えたものだ。千鶴さんの背丈を超すまでに成長したが、枯れてしまったたため、2年前に植え直した。少しずつ大きくなっている。

 2人は墓に手を合わせた後、桜の木に触れた。「そちらでお義母さんとおばあちゃんと仲良くしているかい」と語りかけた。花が咲く日まで、これからも通い続ける。

 

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