震災・原発事故13年 動画でつなぐ震災の記憶 避難の級友や語り部取材 福島県いわき市の中央台南中1年生有志

 

震災を学び、語り継ごうと動画の制作に携わった生徒。「同世代にも見てほしい」と

 

2024/03/17 09:25

 

中学生が制作した動画の一場面。上は大熊町を訪れる吉崎さんら、下は総合学習の成果をまとめたレポート

 

 

 福島県いわき市の中央台南中の1年生有志は同級生や地元の語り部に東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を巡る体験を取材し、動画にまとめた。震災の前年や直後に生まれ、直接の記憶はない。総合学習で伝承施設などを訪ねて学びを深めた。作品には生後間もなく大熊町を離れた級友や、津波の被害から営農を再開した農業者が登場する。「大変な出来事だったと改めて感じた」「同世代に見てほしい」。メンバーは教訓や記憶の継承に意欲を示している。

 

 放送委員の鈴木美空(みく)さん(13)と鈴木結瑛(ゆえ)さん(13)、東愛心(あこ)さん(13)、白土菜南(ななみ)さん(13)が聞き手や撮影、ナレーション、編集を担当。生徒や語り部ら約10人に13年前の記憶や復興の歩み、今の心境を聞いた。津波の被害や避難所だった校舎、仮設住宅があったころの様子を伝える写真を織り交ぜ、「Coming Back Home~帰郷~」の題で約5分間にまとめた。

 作品に登場する一人は大熊町生まれの1年生吉崎めいさん(13)。原発事故を受け、1歳になる前に古里を離れた。メンバーと一緒にかつて自分が暮らした町内のアパートを訪ねる姿を映した。「生まれた実感はないけれども、大熊のことを大人になるまで考え続ける」と率直な思いを語った。

 3年生の清水晶子さん(15)は県内外での約200日の避難の歩みを兄や姉とまとめた地図を紹介。浸水した水田を手入れし、営農再開した祖母の姿も伝え「震災は忘れていないという思いを持ち続けている」と決意を語っている。

 今の中学1年生は2010(平成22)年4月から1年間に生まれ、震災と原発事故から当分の間の出来事は覚えていない。中央台南中は「震災について知りたい」との生徒の声を受け、震災復興を総合学習のテーマの一つとした。約20人が昨年秋から市内のいわき震災伝承みらい館、富岡町のとみおかアーカイブミュージアムなどを訪ね、被害と復興について学んだ。

 動画撮影は学んだ過程を記録に残そうと始め、授業の内容以外にも対象を広げて昨年末に完成した。

 震災伝承みらい館は動画を館内で流すことを検討している。語り部として協力した石塚洋悦さん(67)は「中学生の主体的な活動は風化を防ぐのに効果的」と評価。生徒に語り部を体験してほしいと願っている。

 報道や授業で震災を「知った気になっていた」という鈴木結瑛さんは「他の生徒にも深く震災を知ってほしい」、鈴木美空さんは「多くの人に見てもらい、見聞きしたことを伝えたい」と話している。

 

■映像日本コンテスト最優秀賞候補に選出

 動画は小中学生や高校生が手がけた映像作品を表彰する、キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)日本コンテスト2023で、中学生部門74点のうち最優秀賞候補4点に入った。結果発表と表彰は17日に東京都で行う。動画はKWN日本のホームページで閲覧できる。

 

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