常磐興産が設備投資強化 米ファンド傘下、上場廃止へ ハワイアンズ名称維持
米投資ファンドへの傘下入りが明らかになった常磐興産が運営するスパリゾートハワイアンズ=9日午後
2024/09/10 10:14
福島県いわき市の温泉施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営している常磐興産(本社・いわき市、関根一志社長)は9日、米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」の傘下に入る方針を発表した。老朽化した施設の補修・改修に必要な費用を確保し、設備投資を強化する。ハワイアンズの名称や従業員の雇用は維持される。フォートレスは常磐興産の全株式取得を目指し、10日からTOB(株式公開買い付け)を実施する。買収総額は最大で140億円規模となる見通し。
ハワイアンズは、前身である常磐ハワイアンセンターの1966(昭和41)年の開業から半世紀以上が経過し、施設の老朽化が進んでいる。しかし、東日本大震災の影響に加え、新型コロナウイルス禍で経営が悪化して借入金の負担が増加し、設備投資ができる状態にないことから、不動産事業などに強みがあるフォートレスの買収提案を受け入れた。
常磐興産は9日の取締役会でTOBへの賛同を表明した。買い付け価格は1株1650円。東証スタンダード市場は上場廃止となる見込み。
新体制でウォーターパーク関連施設などの補修・改修などに投資し、収容人数の増加を図る。繁閑に応じた変動料金制の導入や割引プランの料金見直し、年間パスの廃止などで収益の最大化を図る。フラガールのショー、地域や取引先との関係は継続する。
常磐興産経営企画部の生田目政明リーダーは「投資によって施設改修が進めば、お客さまの快適性や利便性向上につながる」とメリットを説明した。
スパリゾートハワイアンズはダンシングチーム「フラガール」のステージショーが人気で、フラガールを題材にした同名映画が大ヒットしたことでも知られる。東日本大震災後、復興の象徴となった。
常磐興産の2024(令和6)年3月期決算の連結売上高は148億8100万円。2024年3月31日現在の連結の従業員数は593人。
【常磐興産の変遷】
1884(明治17)年10月
磐城炭礦社が設立
1895年5月
入山採炭が創立
1944(昭和19)年3月
磐城炭礦と入山採炭が合併し、常磐炭礦が設立
1966年1月
常磐ハワイアンセンターが営業開始
1970年7月
常磐炭礦が常磐興産に商号変更
1990(平成2)年3月
常磐ハワイアンセンターを「スパリゾートハワイアンズ」に名称変更
2003年8月
本店を東京都中央区からいわき市に移転
2006年9月
映画フラガール全国一斉ロードショー
2011年3月
東日本大震災に伴い、9月末まで全館休館
5月
フラガール全国きずなキャラバン開始
2017年1月
ハワイアンズの開業以来の入場者数が6500万人を突破
※フォートレス・インベストメント・グループ 1998(平成10)年に設立された投資運用会社。本拠を米国ニューヨークに置き、日本を含む12カ国に拠点を持つ。運用資産額は約490億ドル(約7兆188億円)、投資実績は総額約1950億ドル(約27兆9318億円)。5月には宮崎市のリゾート施設「シーガイア」の運営会社の買収を決めた。昨年9月には、セブン&アイ・ホールディングスから百貨店、そごう・西武を買収した。