繊維業タッグ、新作ハンカチタオル共同開発 奥会津昭和村振興公社と浅野撚糸(福島県双葉町) からむし糸の弱さ克服

 

浅野撚糸双葉事業所で浅野さん(左)から説明を受ける(左2人目から)舟木村長、湯田さん、紺野さん

 

2024/09/23 10:49

 

からむし糸で刺しゅうしたハンカチタオル

 

 福島県昭和村の奥会津昭和村振興公社は福島県双葉町に事業所を置く浅野撚糸と連携し、村産からむしの刺しゅうを施したハンカチタオルを共同開発した。からむし糸の課題だった切れやすさを、撚糸の技法を取り入れて克服した。振興公社は他製品への応用を見据え、浅野撚糸は県産品としてのブランド力の向上を見込む。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う被災地への進出企業と、福島県の地場産業との協力の好例として注目を集めそうだ。

 

 ハンカチタオルは浅野撚糸の人気商品「エアーかおる」の生地に、村特産のカスミソウの形をかたどった模様をからむしの糸で縫い付けた。タオル地は色とりどりの「染めかすみ草」から着想し、5種類の色をそろえた。

 奥会津昭和村振興公社は村の新たな土産物の開発を検討していた。今春、「からむしの糸で刺しゅうをしてもらえないか」と浅野撚糸に協力を求めた。からむしの糸を刺しゅうに用いた経験はこれまでなかった。糸は強度にむらがあって切れやすく、タオル地などに縫ったところ、裏地の糸が絡まってしまう課題が浮かび上がった。

 相談を受けた浅野撚糸社長の浅野雅己さん(64)は「福島だからこそできる連携」と協力する意義を従業員らに熱く訴えた。50年以上積み重ねてきた撚糸技術への自負を胸に工場で試行錯誤を重ねた。2本のからむし糸を、自社の通常の製造工程よりも多くねじり合わせ、1本の丈夫な糸を生み出す方法にたどり着いた。約4カ月を経て商品化にこぎ着けた。

 振興公社専務の湯田文則さん(68)は「この期間で本当に商品が仕上がるとは思わなかった。刺しゅうを生かした新たな製品づくりに力を入れたい」とさらなる構想を膨らませている。

 

■福島県の技術発信第1弾 川俣シルク紺野機業場含む3者

 両者の連携は、昨年度の第9回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)を機に進んだ。川俣シルクを手がける紺野機業場(川俣町)を加えた三つの受賞企業が共通する繊維業で手を携え、福島県の技術を発信する第1弾と今回の試みを位置付けている。

 3者は2月に福島市で行われた表彰式で顔を合わせた。浅野撚糸双葉事業所(双葉町)を見学するなどしてそれぞれの技術や事業に理解を深めた。互いの顧客に製品の魅力を伝え合う共同販売会なども想定しており、11月にはアジアの服飾関係者が集う台湾の展示会に昭和村がブースを設ける予定だ。

 繊維産業は安価な輸入品に押されて縮小傾向にある一方、高品質の素材は海外から評価されている。県内には会津木綿や伊達ニットなど、地域に根差した繊維技術が数多い。浅野さんは「連携を深め、世界に売り込む」と販路開拓に意欲を示す。紺野機業場社長の紺野峰夫さん(41)も「輪を全県に広げ、PRしたい」と広がりを見据える。

   ◇    ◇

 新産業創出を目指す福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を背景に、浜通りをはじめ被災地には多くの企業が進出している。中通りや会津地方に構想の効果をいかに波及させるかが課題だ。

 舟木幸一昭和村長は「会津の地から被災地の復興に関わる」と決意。振興公社と浅野撚糸の連携を後押しした福島イノベーション・コースト構想推進機構の理事長補佐、伊藤泰夫さん(66)は「3者の取り組みは先行例となる」と構想の趣旨にかなった動きと強調する。県も企業間連携を後押しする考えだ。

 

■ハンカチタオル販売中

 奥会津昭和村振興公社と浅野撚糸によるハンカチタオルは昭和村の道の駅からむし織の里しょうわ、昭和温泉しらかば荘で販売している。1枚1430円(税込み)。からむし織の里しょうわのウェブ通販サイトでも扱っている。浅野撚糸は近く、双葉町の双葉事業所で販売を始める予定。村内の2施設では村のマスコットキャラクター「からむん」のデザインを縫い合わせたハンカチタオルも1枚千円(同)で購入できる。問い合わせは振興公社へ。

 

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