威風働々 復興進めるシンボル かわうちワイン(福島県川内村)
収穫された原料のブドウの選果作業に当たる住民スタッフ。ワイン造りが復興のシンボル的存在となっている
2024/11/05 11:15
ワイン醸造施設「かわうちワイナリー」は村北西部の阿武隈山系の丘陵地に位置し、標高は約750メートル。南向き斜面に4・5ヘクタールの畑が広がる。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を進めるシンボル的存在となった。
施設内には大小28個の醸造用ステンレスタンクが並んでいる。その一角で台を囲み住民スタッフらが、原料のブドウの選果作業に当たる。真剣なまなざしで房を手に取り、ごみや不出来な実を除いていく。
福島県川内村のワイン事業は2014(平成26)年冬に始動した。ほ場の選定と開墾に加え、気象観測や地質調査なども行われた。2016年春、村民やボランティアが苗木約2100本を植えて以降、年々本数を増やし、今では1万5500本となった。
2017年8月に事業会社「かわうちワイン」が設立され、2021(令和3)年5月にはかわうちワイナリーが完成。醸造が始まり、約1万1千本が生産された。今年は約2万本を目標にしている。造られているのは赤、白、オレンジ、ロゼの4種類、9銘柄。冷涼な気候を生かした栽培で深みのある香りと味わいが特徴だ。
遠藤一美統括マネージャー(47)は「苦労はあるが、『おいしい』と言ってもらえるワイン造りを続けたい」と、始動からの10年を振り返るとともに、さらなる品質向上を誓った。