【今を生きる】甘い羊肉を福島県大熊町の名物に 東京から移住の松本龍之さん 「活気回復に貢献したい」

 

羊肉の初出荷に向け、ヒツジを飼育する松本さん。大熊の新名物に育て上げ、復興への貢献を誓う

 

2025/03/03 10:40

 

 東京都から福島県大熊町に移住した松本龍之さん(54)が中心となり町内で羊肉の生産に取り組み、初出荷にこぎ着けた。大熊で除染や家屋解体に携わるうち、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の力になりたいとの思いが湧いた。畜産は未経験だったが、試行錯誤を重ねて地元産のイチゴを配合した飼料を考案。味に甘味が増すと好評を得ており、「ストロベリーシープ」と名付けた。今春にも町のふるさと納税の返礼品に採用される。「地域の活気の回復に貢献したい」と意気込む。

 

 「メェ~」。町内大川原地区に建てた屋内飼育施設には約40頭のヒツジの鳴き声が響く。松本さんが餌やりや小屋の清掃にいそしむ。

 都内で営む建設会社の仕事で6年ほど前から町内に住んでいる。町の各所で新しい建物が徐々に完成し、復興は着実に進む。しかし人を引きつける何かが足りないと感じた。両親がいわき市出身で、幼少のころから頻繁に浜通りを訪れてきたゆかりの地でもある。「大熊のためにできることはないか」と考えるようになった。

 そんな時、東京でジンギスカン店を経営する知人から、国産羊肉の国内流通量は1%未満と聞いた。「希少な肉を大熊から発信すれば復興につながる」。直感が働きヒツジの飼育を決めた。

 約3年前から餌を与える頻度や小屋の清掃方法などを勉強した。学びを深める中、「大熊の復興を伝えるには他との差別化が必要だ」と思い至った。ただ、具体的にどうすれば良いのか名案は浮かばなかった。

 知人をたどり、羊肉を手がける葛尾村の畜産会社「牛屋」の紹介を受けた。話し合いを重ね「地元の特産品を餌に使えば、大熊で進む取り組みもアピールできる」とひらめいた。町内では農業復興に向け、新たにイチゴ栽培に取り組んでいる。すぐに町内のネクサスファームおおくまに向かい、通常なら廃棄処分される規格外イチゴを譲り受けた。

 農業再生事業に取り組む「おおくま未来」執行役員となり、従業員2人と協力して2023(令和5)年8月にヒツジ4頭の飼育を開始した。乾燥させたイチゴを牧草に交ぜて与えると、肉質に変化が現れた。昨年10月に初めて羊肉に加工し、知人に試食してもらうと「臭みが抑えられ、肉に甘みがある」と声をそろえた。

 町のふるさと納税の返礼品に決まったのは品質の高さが認められたから。将来的には羊肉を提供する飲食店を開き、牛屋との連携も視野に入れている。

 松本さんは「一帯を羊肉の一大産地にして観光にも生かし、交流人口拡大につなげていきたい」と未来を思い描く。

 

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