次世代交通「トイボ」体験から見える移動の未来

 

■ スマート交通「トイボ」の利用方法

いわき市内の移動でぜひとも試していただきたのが次世代交通「トイボ」。スマホや電話で予約をすれば、その場所までやってきて、目的地まで連れていってくれる。次世代のオンデマンド型(予約制)スマート交通として、その可能性を探るべく、実証実験が行われているのだ。

実際に利用させてもらったが、利用方法は簡単で、風を切りながらいわきの町中を走ることができ、興味深い体験をすることができた。

利用方法は簡単で、スマホから予約することで乗車が可能だ。私はスマホから専用WEBサイトを経由して利用申込みを行なった。サイトに入れば、地図上から乗車地点と行き先を選ぶことができる。乗車希望時間と乗車人数を指定すると、予約番号が発行されて、予約が完了する。あとは指定の乗車位置で待っていれば、ほぼ時間通りにトイボはやってくる。

スマホ利用に慣れている人であれば、さほど困ることなく予約が完了する。スマホに慣れてない方は電話での予約も可能だ。ポイントは、予約制の移動手段である、という点だ。

トイボが今、どこを走っているのは、スマホの画面内で確認ができて、いつ来るかわからない、といった類の不安からは開放される。画面を見ながら「あ、もうすぐ到着だな」といった感じで、安心して待つことができた。

いわき駅前のタクシー乗り場の脇にある乗車場所で待っていたら向こうから黄色い可愛らしい車体が見えてきた。ほぼ時間通りに、いわき駅前の乗車場所にトイボはやってきた。

車体は小ぶりで、電動駆動のため、音は静かだ。

■ いざ、トイボに乗車

運転手さんがドアを開けてくれ、車内に乗り込む。

トイボに乗り込むと、予約番号の確認画面が表示される。予約番号を照合した上で、払い方を選択し、料金を払えば精算も完了。現金での支払いも可能だが、交通系ICをはじめとした電子マネーを使っての精算も可能で、観光客も利用しやすい。また料金は100円と安く、小学生以下は無料となっており、子供との移動にはさらに重宝しそうだ。

そしてトイボに乗り込んだ。

車体が新しく、車内もピカピカ。乗車人数は8人程度が余裕をもって座れる広さがある。9月の末に乗ったのだが、窓はなく風が気持ちよく流れ込んでくる。

この日はちょうど天気もよかったため、全身で風を感じながら、いわき市の中心部の平エリアを走り、車窓から町の雰囲気を見ることができた。

折角の機会だったので、次世代交通としての「トイボ」の可能性を探りたくなり、実際の利用場面などについて。ドライバーさんにあれこれと聞いてみた。

■ トイボの可能性

Q. 乗車人数はどれくらい?

私が乗ったのは朝10時半頃だったが、その日 3人目の乗客だったようだ。福島県でも、新型コロナウイルスの感染を恐れて移動を控える人が多く、1日の利用者は平均すると10名程度と減っている。外に出る人が減れば、こうなってしまうのは仕方ない。なお、1日の最多乗車人数としては、日曜日に80名の移動をサポートした事があるそうだ。

Q. どんな人が利用するの?

地元の方の利用がほとんど。目的地としては、病院や買い物のための移動が多い。乗客としては、定期的に利用されている方が多い。とりわけ重宝されているのが、親子連れの移動。母親が子供2人を連れて出かける際などの利用も目立つという。しかし、まだまだ認知度が低いのか、利用のハードルが高いと感じてしまうのか、利用者数は限られているようだ。

Q. 移動時間は?

平地区という限られたエリアでの走行につき、移動時間は10〜15分程度の移動がほとんど。実証実験の対象エリアは、さほど広いエリアではないため、エリア内を端から端まで歩いて30分ほどで歩いて行ける距離だ。しかし、それは1人で健脚な方の場合に限る。
 例えば、5歳の子供が一緒だったり、ベビーカーを押していたり、重い荷物があれば、20分も歩くのはなかなかしんどい。そんな利用場面ではトイボに頼ることができれば、楽に移動ができる。対象エリア内には、かなり多くの乗車場所が設定されており、乗車位置や降車位置を細かく調整できるのも利用者としては助かる。対象エリアに入ってさえいれば、そのエリア内移動はとても便利になる。

■ 実際に「トイボ」を利用してみての感想

私自身、実際にトイボを利用してみたところ、気軽に使えて移動が快適になる便利さ、は強く感じた。とりわけ私はスーツケースを持っての移動だったため、かなり助けられた。

 しかし、物珍しいものにとどまっており、いわき市民の日常の足として、生活に溶け込んでいる、といった感じはなかった。私自身、トイボに乗っての移動中に、小学生くらいの子供たちの集団に手を振られる経験をした。町に1台しかない希少性があるから、かもしれないが、もし普段からトイボを見慣れており、日常にも溶け込んでいれば、手を振られることはなかったように思う。

 写真こそないが、いわき市に滞在している期間中、駅前でトイボのビラを配っている方もおり、認知度向上と利用者数の増加については、まだまだ取り組みの最中であるような印象を受けた。

また現在は1台しか運行していない事もあり、当然ながら待ち時間が発生する。厳密には記憶していないが、3分後に乗る、といった利用はできない。予約制であること、台数が限られていることからも、その点はやむを得ないだろう。台数が増えていけば、この点はもっと便利になっていく可能性を秘めているように感じた。

 現在は、スマート交通の実現に向けた、実証実験中であり、私がいわき市を訪問した際には、平地区が実証地域となっていたが、以前は小名浜地区が実証地域となり、運行されていたようだ。そして、2021年1月時点では再度、小名浜地区で運行中のようだ。

 また電気自動車であることから、環境負荷は圧倒的に少なくなる点も個人的には評価したいし、どんどんこうした移動手段が増えていけばいい、と感じた。

 日本全国の各都市では、「ラストワンマイル」が課題にあげられる。そうした地方交通において、予約制スマート交通が果たす役割を考えるいい機会になった。

 いわきに訪れた際には、スマート交通の未来を、ぜひ体験してみてはいかがだろうか?

【詳細はこちら】
「グリーンスローモビリティを活用した次世代交通システム実証」『トイボ(toybox)』について

関連記事

ページ上部へ戻る