記憶紡いだ7年に幕 浪江「思い出の品展示場」

 

 東日本大震災の津波被害を受けた福島県浪江町の沿岸部で見つかった物を保管・展示し、持ち主に返してきた同町の「思い出の品展示場」が二十一日、幕を下ろした。震災と東京電力福島第一原発事故から十年が過ぎ、人々の記憶が少しずつ薄れていく中、展示された品々は、最終日も来場者に古里の思い出の日々を語り掛けていた。

 「自分の気持ちに決着をつけたい」。浪江町請戸に住んでいた女性は、避難している福島市から三日間、展示場に通った。

 連日、午後四時の展示場が閉まる時間ぎりぎりまで、一万枚に及ぶ大量の写真を見続けた。全ての写真に目を通し、該当する物は見つからなかったが、展示場が閉鎖される前に、気持ちの整理をつけたかったという。

 二〇一四(平成二十六)年七月末にギフト店跡に開設され、七年間で延べ一万人を超える来場者があった。しかし、年を追うごとに減少し、返却する品数も減ってきた。

 環境省、浪江町は一定の役割を終えたとして、震災と原発事故から十年を機に、閉鎖を決めた。新聞で「三月二十一日の閉鎖」が報じられると、来場者が増えた。春彼岸の中日の二十日は、墓参りに古里に戻った人ら百三人が展示場に足を運んだ。最終日の二十一日も、来場者が写真をはじめ、縫いぐるみやおもちゃ、表札などをじっと見詰めていた。

■延べ1万1377人来場

 七年間の入場者数は延べ一万一千三百七十七人。このうち、八百一人が二千七百二十九点を引き取った。写真などは保存し、その他は処分される予定。

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