仁の心人権育む 本紹介やフォーラム 白河市が今年度新事業
白河市は今年度、思いやりの心を意味する「仁」を前面に打ち出し、子どもたちの感情や情緒を育む事業を始める。新型コロナウイルス感染者への誹謗(ひぼう)中傷や差別が国内外で社会問題化している中、人権を大切にする地域づくりを目指す。戊辰戦争時、白河などで人々が敵味方の隔てなく犠牲者を弔った歴史にならった取り組みで、関係者は「白河の地から『仁』の心を発信したい」と意気込む。
市は戊辰戦争百五十年の節目の二〇一八(平成三十)年、「甦(よみがえ)る『仁』のこころ」をテーマに掲げた講演会やシンポジウムなどを繰り広げ、寛容な精神を持つことの大切さを発信した。今回、再び「仁」に光を当て、市民の人権意識を高める。
小学生を対象に、思いやりを題材とする図書の感想文を発表するブックトークを催す。学んだ成果を学校や家庭で共有してもらうとともに、紹介された本は市立図書館などに掲示して広くPRする。
中学生向けに、いじめ防止策を考えるフォーラムを開く。新型コロナや会員制交流サイト(SNS)など生徒の興味や関心に応じた題材で意見を交わす。いじめ撲滅に向けて生徒が主体的に取り組む意識を醸成する。一般向けには、講演会やシンポジウムなどを開催し、幅広い世代で人権に対する意識を高めてもらう。各事業は白河人権擁護委員協議会と連携して実施する方針で、具体的な日程などを調整している。
市内では九日時点で、六十六人の感染者が確認されている。市や協議会に対し、現時点で新型コロナ関連の中傷などの相談は寄せられていないという。ただ、協議会長の笠原克洋さん(76)は「自分たちの活動が十分に周知されず、相談先が分からない人もいるのでは」と推察する。今回の事業を通じて、市民への広報活動を強め、相談しやすい環境を整える考えだ。
市は昨年十月、新型コロナや疾病、障害などを理由とする不当な扱いの防止を目的とする「市思いやり条例」を県内で初めて施行した。同市のご当地ヒーロー・ダルライザーを起用したポスターを市民に配布し条例の理念の浸透に努めてきた。
同様の条例制定の動きは全国の自治体で広がっている。県男女共生課によると、県内では広野町が昨年十二月に「町人にやさしいまちづくり条例」を制定した。
市市民課の担当者は「今こそ『仁』の心が求められる。人権擁護の理念を白河から県内外に波及させたい」と青写真を描いている。
■人権意識を高めるための主な事業
【(仮称)仁のつどい】
◆思いやりブックトーク(小学生)
各校の代表児童が「思いやりの1冊」を発表する。紹介された本を市立図書館などでPRする
◆いじめフォーラム(中学生)
各校のいじめ防止に向けた特色ある取り組みを発表し合い、意見交換する
【人権尊重シンポジウム】
基調講演やパネルディスカッションなどを開催し、市民に「市思いやり条例」の理念を普及する
【正しい知識の普及啓発】
◆啓発用ポスターやカードの作成、配布
◆市の広報紙に人権に関する特集記事を掲載