【内田新いわき市政の課題(上)】医師不足の解消急務
県内最多の人口を抱えるいわき市のトップが8年ぶりに変わる。5日に投開票された市長選で、市民は市政の継続ではなく、行政経験や中央省庁とのパイプをアピールした元文部科学省教育改革推進室長の内田広之氏(49)を新たなリーダーに選んだ。新型コロナウイルスや人口減少社会など課題が山積する。内田氏はいかに公約を実現するのか。新市政の行方を探った。
市長選から一夜明けた6日、浜通りの中核病院を担う市医療センターには普段と変わらず多くの患者が訪れた。2018(平成30)年に開院したセンターには今年4月1日現在、過去2番目に多い139人の医師が常勤している。
医師として一定期間勤務すれば返還が免除される医学生向けの修学資金貸与制度を2007年に設け、院長が大学説明会などに直接赴き生の声を届ける地道な活動を続けてきた。担当者は「人材確保に一定の効果を挙げている」と話す。
一方、各候補は選挙選でいわき市の医療政策を訴える際「医師不足」というフレーズを使った。厚生労働省によると2018年12月末現在、市の人口10万人当たりの医師数は167・1人。同じ中核市の郡山市の253・2人に比べて86人少なく、福島医大など医療資源が豊富な福島市の379・2人と比べると44%で半分以下だ。全国平均の246・7人も下回る。
そこに、新型コロナウイルスの猛威が降りかかった。7月下旬からの第5波では一時、1日当たりの陽性者が100人を超えた。基幹病院の福島労災病院でもクラスター(感染者集団)が確認され、救急医療や入院が一部制限されて周辺の医療機関に患者が流れた。コロナ禍の医療従事者の負担は増え続けている。
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内田氏は公約に新型コロナの撲滅と医師不足の解消を掲げた。クラスターの積極的な情報公開のほか、課題を把握するために構想委員会を立ち上げ、診療科ごとに不足する医師数を分析して計画的に確保するとしている。
ただ、医師を一時的に確保できたとしても、市に定着するかは住民サービスの質や交通網など別の視点も重要になる。新型コロナ対応の上でも欠かせない医師不足の解消は中長期的な取り組みが求められる。