名物の「浜焼き」、29日から販売 福島県相馬市・松川浦ガイドの会 昨年秋に復活

 

「浜焼きで旅館街を活気づけたい」と、大型連休に備えて焼き台の状況を確かめる管野さん]

 

2022/04/21 09:29

 

 

 3月の地震で甚大な被害を受けた福島県相馬市松川浦地区の多くの旅館やホテルが営業再開を見通せない中、若手の旅館後継者でつくる松川浦ガイドの会は29日から5月8日までの10日間、名物の「浜焼き」を販売する。若旦那たちは昨年秋に東日本大震災から10年半ぶりに復活させた”復興のシンボル”を活用し、「旅館街全体に活気を取り戻したい」とピンチを乗り越える。

 地震が起きたのは、コロナ禍収束後を見据え、浜焼きや伝統漁法体験などで着地型観光に取り組もうと準備していた時だった。昨年の地震から度重なる被害を受けた。

 事務局長の管野功さん(45)=旅館いさみや専務=の旅館は屋根瓦や壁などが壊れ、昨年の地震後に修理したばかりの客室や大広間は雨漏りで使えなくなった。「廃業がよぎる経営者もいる。旅館街の雰囲気が暗く重くなっている」と感じた。「このまま何もせずにはいられない」。同じように営業できなくなった仲間と話し合い、「旅館街の雰囲気を変えよう」と立ち上がった。

 浜焼きは、串打ちした魚介類に会員の親の世代から伝わる秘伝のタレで味付けして焼く。かつて旅館街の名物だった。震災と原発事故の影響で途絶えていたが、昨年11月に浜の駅松川浦で復活販売した際は、懐かしい味を求め、人の波ができた。

 今回はカレイ、イカ、エビ、ホタテ、トウモロコシの他、高級魚として知られるツボダイも数量限定で加える。会場に復興支援募金箱も設け、再起を目指す旅館街への協力も呼び掛ける。

 今回の販売イベントの目的は、松川浦の食を楽しんでもらうだけではない。地震から1カ月が過ぎ、少しずつ被災地への関心が薄れていると感じている。食を求めて訪れた人に「被害の大きさをあらためて知ってほしい」との思いがある。旅館街の完全復活までは長い道のりかもしれない。それでも管野さんは「ここで負けずに立ち上がり、松川浦の観光を再び盛り上げたい」と力を込めた。

 浜焼きは松川浦地区の旅館いさみや駐車場(相馬市尾浜字船越92の1)で販売する。時間は午前10時から午後3時まで。品物がなくなり次第終了する。

 

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