浜通り15市町村で広域観光事業 交流人口拡大へ連携 福島県と経済産業省が新組織

 

2022/06/01 09:40

 

 福島県と経済産業省は、東京電力福島第一原発事故で避難区域が設定された12市町村にいわき、相馬、新地の浜通り3市町を加えた15市町村の交流人口拡大に向け、初めての広域観光連携事業に乗り出す。今夏にも新組織を民間企業と合同で設立し、市町村や地元事業者らが「酒・グルメ」「スポーツ」「山」「海」「歴史・文化」「芸術」の6つのテーマで体験型ツアー実施や交流拠点の整備などに向けて具体的な検討に入る。

 県と経産省は5月31日、取り組みの方向性を示したアクションプランを策定し、大熊町で開いた検討会で市町村の代表者に示した。6月中に組織を設立する民間企業の公募を始める。組織は「15市町村広域マーケティング機関(仮称)」で、県が補助金を交付する。テーマごとに分科会を設け、アイデアの共有、調査・分析、企画立案を進め、浜通りの地域資源を生かした観光コンテンツを作る。住民や専門家の助言も受ける。県と経産省は参加者の調整や財政支援制度の紹介を担う。

 このうち「酒・グルメ」「スポーツ」については6月に事前検討を始める。他の4テーマの分科会は秋に活動を開始する。「酒・グルメ」には田村、富岡、川内、大熊、葛尾、飯舘の6市町村が参加予定で、地場産品や豊かな自然を生かした体験型ツアーの実施などを想定している。大熊町で栽培した酒米を使い、会津若松市の酒蔵で醸造した日本酒「会津娘 純米吟醸酒『帰忘郷(きぼうきょう)』」や川内村のかわうちワイナリーのワインなどを活用して酒文化の魅力を発信する。

 県によると、15市町村の2020(令和2)年度の国勢調査人口は49万9847人。東日本大震災前の2010(平成22)年度の59万4190人から16%減少した。観光入込客数も震災の影響で落ち込んだ。担当者は「交流人口を増やし、移住につなげたい」と語る。

 これまでは市町村が個別に観光事業を打ち出していたが、情報発信が不十分な面があった。複数の市町村が手を取り合うことで一元的なPRが可能になる。インターネットを通じて情報発信を予定しており、県と経産省はデジタル技術の活用を学ぶ研修会を開き、効果的な方法などを協議する。

 検討会に参加した大熊町の新保隆志副町長は「震災からの復興状況が15市町村ごとに異なる」とした上で、「地域のことを知ってもらう入り口になる。1町だけではできない取り組みを共に考えたい」と話した。

 

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