夢の初陣私らしく 女性出場緩和後初野馬追まで1カ月 中ノ郷騎馬会 菊田美鈴さん 22

 

初陣に向けて練習に熱が入る菊田さん

 

2025/04/24 10:19

 

 相双地方の国重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は、5月24日の開幕まで1カ月となった。女性騎馬の出場条件が昨年までの「20歳未満の未婚者」から緩和され、年齢や結婚の有無にかかわらず出場できる。20歳を超えて初陣を迎える女性8人が出場を予定しており、本番に向けて鍛錬に熱が入る。出場者は「性別に関係なく、役目を務める」と意気込む。

 

 宮城県大衡村の保育士菊田美鈴さん(22)は、中ノ郷騎馬会から初陣を飾る。「練習とは違う部分があり不安もあるが、楽しみたい」と声を弾ませる。

 保育園を卒園するまで南相馬市で育った。開催が近づくとまち全体が野馬追ムード一色になり、心が躍った。祖父大岩常男さん(72)や父慎司さん(47)が出場しており、自宅では馬を飼っていた。2人に憧れを抱き、「自分もいつか出てみたい」と思っていた。ただ、小学校に上がるのと同時に宮城県に引っ越してからは勉学や部活動に忙しく、乗馬の練習環境を確保するのが難しかった。次第に年齢を重ね、女性の出場制限により初陣の夢はかなわなくなった。

 昨年夏に転機が訪れた。祖父から「(女性の)出場制限が緩和されるかもしれない」と知らされた。当時、実際に緩和されるかは不透明だったが、わずかな望みを懸け、同9月に南相馬市で乗馬の練習を始めた。初めての乗馬で落馬も経験したが、諦めず馬にまたがり続けた。今年2月に出場制限の撤廃が決まると出場できる喜びがこみ上げた。「気持ちで負けないよう、経験をもっと積みたい」と練習に熱が入る。

 2人の野馬追に懸ける思いを受け継ぎ、当日は祖父と父の武具をまとう予定だ。「周囲の力を借りながら、頑張りたい」と誓う。「女性の出場者が増えて頭数が増加すれば、さらなる活気も生まれるのでは」と期待している。

 

■世話になった人に勇姿を 元相馬市建設部長 山下茜さん

 宇多郷騎馬会から山下茜さん(33)=仙台市、東北地方整備局仙台河川国道事務所調査課長=が初めて出陣する。今春まで、国土交通省からの派遣で相馬市の建設部長を務めていた。「性別に関係なく、出るからには立派に役目を務める」と意気込む。

 国交省から相馬市に派遣された歴代部長は野馬追に出陣してきた伝統がある。山下さんも騎馬武者の威風堂々とした姿に憧れ、出たいと気持ちを膨らませていた。緩和されればいつでも出場できるようにと、昨年11月から馬に乗り始めた。

 現在、週末に仙台市から相馬市を訪れ、技術を高めている。小屋の掃除や餌やりなどに積極的に取り組み、馬に慣れるよう努力している。相馬市で働いた期間は1年に満たないが、出会ってきた人の温かさに触れ、大好きな地になった。「相馬でお世話になった人たちに立派な姿を見せたい」と願う。

 

■緩和で8騎出場可に

 今年の相馬野馬追は5月24、25、26の3日間、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地をメイン会場に相双地方で繰り広げられる。23日時点で、394騎が出場を申し込んでいる。昨年、実際に出場した382騎より12騎多い。女性は約40騎で、このうち制限緩和で出場できるようになったのは8騎。有料の指定席券は完売し、自由席券を販売している。

 

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