奇跡のピアノ演奏会 いわきの伝承みらい館 震災から10年を前に企画
東日本大震災の津波に巻き込まれ、その後よみがえった、いわき市の「奇跡のピアノ」の演奏会は十一日、同市薄磯のいわき震災伝承みらい館で催され、震災を体験した市内の三人が情感を込めて演奏した。
二カ月後に震災から十年を迎えるのを前に、当時の記憶を思い起こし、防災意識を高めてもらおうと伝承みらい館が企画した。港湾作業員の輸送船で沖合に出て津波から身を守った鈴木国友さん(71)が、ドビュッシーの「月の光」を奏でた。
続いて市内沿岸部を車で走行中、激しい揺れに襲われた鍵谷浩子さん(45)と長女ほのかさん(14)=豊間中二年=が登場。ほのかさんは津波の被害を受けた豊間中の校歌を弾き、元ピアノ教室講師の浩子さんはドビュッシーの「アラベスク第一番」を披露した。浩子さんは「奇跡のピアノに触れ、娘が震災を考えるきっかけになってほしい」と願った。
モニターには津波の映像が映し出された。集まった約三十人は画面を見詰め、ピアノの旋律に耳を傾けた。