地震から1時間後相馬で土砂崩れ 車運転男性、九死に一生
「目前に巨大な岩が降ってくるのが見え、死を覚悟した」。地震発生から約一時間が経過した十四日午前零時ごろ、乗用車を運転中だった相馬市の会社員男性(23)は、市内の松川浦大橋付近で起きた土砂崩れに巻き込まれた。危うく直径約六メートルの巨岩に押しつぶされそうになり、九死に一生を得た。
十三日の地震発生時は市内の自宅にいた。家に大きな被害はなく、津波の心配がないことを確認した上、車で宮城県内の勤務先に出発した。
通勤に使う市道大洲松川線は東に太平洋、西に松川浦を望む。松川浦大橋にさしかかった時、路面に砂利が散乱しているのに気付く。嫌な予感がした。突然、車体を突き上げるような地鳴りを耳にし、前方に巨岩がごう音をたてて落下してくる。とっさにブレーキを踏んで直撃は回避したが、道路に崩れ落ちていた直径約二メートルの岩にぶつかった。男性は強い衝撃を受け、頭から出血した。必死に車内から脱出し、警察に助けを求めた。
「あと二秒ブレーキを踏むのが遅れていたら…」。救助に駆け付けた警察官が漏らしたつぶやきを聞き、背筋が凍り付く。救急車で市内の病院に搬送されたが、大事には至らず、治療を受けて帰宅した。
車の移動に立ち会うため、その日の日中、再び現場に戻る。崖が崩れ落ち、大きな岩が道路をふさぐ。バンパーなどが無残にひしゃげた愛車を見て地震の猛威を実感する。東日本大震災の時も自宅近くに津波が迫った。「震災から十年後になって、こんな恐ろしい思いをするとは」と声を絞り出した。