処理水海洋放出、決定過程に不満の声 自民議員「あまりに拙速」

 

 東京電力福島第一原発で発生する放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出方針決定から一夜明けた十四日、政府は二年後をめどとする実施に向け、与党への説明や国際機関への報告などを進めた。自民党東日本大震災復興加速化本部への説明では、議員から「国民の不安の声は大きい」「あまりに拙速」などと政府の決定プロセスに不満を示す声や対策の充実を求める声が上がった。一方、福島県は関係部局長会議を開き、国への意見書を取りまとめる方針を決めた。

 自民党本部で開かれた東日本大震災復興加速化本部の総会では、経済産業省の担当者らが所属議員に処理水の海洋放出など処分方針の概要を説明した。冒頭を除いて非公開となり、会合後に額賀福志郎本部長が記者団に内容を説明した。

 出席した議員らによると、事前に党との協議などがなく唐突に方針が決定されたことについて、議員からは「報道で最初に知り、きょう内容を初めて説明された」「(時期は)本当に妥当なのか。拙速ではなかったのか」などの厳しい意見が出た。「漁業者から不安の声が上がっている」と地域の思いを代弁する声や「国民、特に漁業者との十分な対話がなされたのか」と政府のこれまでの対応を疑問視する声も上がった。

 政府の方針に一定の理解を示しつつ、対策の不十分さを指摘する意見も出た。方針では処理水の安全性について「科学的な根拠に基づく情報を分かりやすく発信する」としている。議員の一人は手法やスケジュールなどの具体性が乏しいとして「この内容では国民に伝わらない。安全だと説明する分かりやすい資料を作るべきだ」と訴えた。

 別の議員は風評対策や産業支援について既存事業が列挙されている点を指摘。「今までやってきたものでなく、一段と強化しなくてはいけない」と注文を付けた。東電が原発事故の賠償に応じないとして多くの苦情が寄せられている事例を示し、国による支援を要望する議員もいた。

 同本部は今後も議論を続け、今夏までにまとめる政府への第十次提言に課題解決の対策などを反映させる考え。額賀氏は記者団の取材に対し、「政策に反映されるよう環境づくり、政策づくりをしていく」と述べた。

■知事、15日に経産相に意見

 内堀雅雄知事は十五日、経済産業省で梶山弘志経済産業相と会い、政府が決定した東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に対する県の意見を伝える。

 県は十四日に県庁で原子力関係部局長会議を開き、各部局の意見集約作業に入った。十五日午前の会議で取りまとめた後、内堀知事が東京都に向かう。

 十四日の会議は冒頭を除いて非公開だった。県の説明によると、内堀知事は会議で「具体的な風評対策の提示や正確な情報発信に責任を持って取り組むよう国に繰り返し求めていく」と述べた。

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