福島県民「コロナすぐ近くに」不安募る いわき市医師会長「危機感薄れている」

 

 県内で一日当たり過去最多となる九十五人の新型コロナウイルス感染が発表された十二日、県民に衝撃が広がった。感染者の半数超を占めるいわき、会津若松の両市民は身近な地域での感染急拡大に警戒を強める。医療関係者は県民の意識が薄れていると指摘し、対策強化を求めている。

 「コロナがすぐ近くに迫っているように感じる」。いわき市の会社員阿部汐莉さん(32)は市内での感染急増に不安を募らせる。

 小学生と幼稚園に通う子ども二人の子育てに追われる毎日。普段から除菌シートを持ち歩き、人が少ない朝の時間帯に買い物を済ませるなどの対策を取っている。帰宅後は消毒を徹底し、感染防止に力を入れる。

 市内では四月以降、感染者の増加が続いている。十二日は県内最多の二十六人の陽性が確認された。県による酒類提供飲食店などへの営業時間短縮や市民への不要不急の外出自粛の要請は十三日から始まる。「今は静かに過ごすしかない」と自身や子どもに言い聞かせた。

 既に飲食店への時短要請が出ている会津若松市でも収束の兆しは見えない。市内のパート従業員仲川あやさん(35)は「感染者数があまり減っていないので効果を実感できない」と受け止める。

 不特定多数の人と接触せざるを得ない業種で働く人からの不安の声も根強い。同市のタクシー運転手の七十代男性は「誰が感染しているか分からない状況。換気や手袋をして料金の受け渡しをするなど、対策は徹底しているが感染しないとは言い切れない」と不安がる。

 感染者は都市部を中心に増加している。郡山市の無職清水昭子さん(77)は、この日の県内の感染者数を知り、思わず「うわー」と驚きの声を上げた。持病があり、同居する娘はインフルエンザの予防接種ができないほどのアレルギー体質。家の中にウイルスを持ち込まないよう、手洗い、うがいを徹底する他、歯磨き粉や手を拭くタオルを別にしたり、家の中でも対面での食事を控えたりしている。

 体力向上のため、毎日自宅で体操やストレッチに励み、買い物などのついでに五千歩は歩くようにしている。「コロナに負けないように体力を付けなければ」と気を引き締める。

■いわき市医師会、木村会長に聞く「危機感薄れている」

 いわき市医師会の木村守和会長は十二日、福島民報社の取材に応じ、「感染に対する県民、市民の危機感が薄れている」と警鐘を鳴らした。

 -いわき市を含め、県内で感染者が急増している。

 「年度末やゴールデンウイーク(GW)で人の動きが増えたのが要因の一つと考える。変異株が流行するなど、これまでとは状況が大きく異なる。極めて危険な段階に来ている。新たな感染症が発生しているという認識で対策に臨むべきだ」

 -どのような感染経路が考えられるか。

 「家庭内、施設内、職場内の感染が増えている。子育て世帯などでは、一人がウイルスを持ち込んだら家庭内での感染拡大は避けられない。まずは自分が属するコミュニティーの中にウイルスを持ち込まないことが必要だ」

 -市民、県民に求める対策は。

 「気を引き締め直し、自分ができる最大限の防止策を講じるべき。食事はいつも一緒にいる人に限定する、マスクを外した会話や飲食の機会は極力減らすなど原点に立ち返ってほしい。屋外での活動も油断は禁物だ。若い世代で重症化するケースがある。『自分は大丈夫』という思い込みは捨ててほしい」

■独自に時短要請へ 飲食店対象、協力金を支給 喜多方市

 喜多方市で新型コロナウイルス感染が拡大している状況を受け、市は独自の緊急対策として、午後八時以降の営業を行っている市内の全飲食店に対して午後八時から翌日午前五時までの営業自粛を要請し、協力金を支払う。期間は十五日午後八時から六月一日午前五時まで。遠藤忠一市長が十二日に開いた緊急記者会見で発表した。

 協力金は一店舗当たり一日二万円。ただし、県が新型コロナ対応の改正特措法に基づく営業時間短縮要請を県内全域の市町村に拡大する方向で調整に入ったことから、金額については県と調整する。協力金の支給対象は居酒屋やスナックなどの酒類を提供する飲食店だけでなく、酒類を提供していない飲食店も含める。市は約二百店舗と見込んでいる。遠藤市長は「感染拡大を押さえ込む重要な局面。強い危機感を持って、引き続き感染対策を心掛けてほしい」と訴えた。

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