【官製風評 処理水海洋放出】政府の姿勢に疑問 経産副大臣が対策尋ね波紋 意見聴取スタート

 福島県の東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出方針を巡り、政府は風評対策の行動計画策定に向け、福島県内関係者からの意見聴取をスタートさせた。しかし、座長の江島潔経済産業副大臣が「風評払拭(ふっしょく)にどのような対策が効果があるか教えてほしい」と繰り返した発言が波紋を広げている。県内農林水産業など関係団体からは風評対策の前面に立つとした政府の姿勢に疑問の声が上がっている。

 五月三十一日に福島県福島市といわき市で開かれた政府主催の処理水処分方針に関する作業部会。福島市会場で五人の出席者から意見を聞き終えた江島氏が問い掛けた。「どういう方法で風評払拭できるか、国としてバックアップできる方法があれば教えてほしい」。風評を防ぐための具体的な対策は、福島県や県内団体がこれまで政府に繰り返し求めてきた。江島氏の発した言葉は、政府に問われている課題の解決策を県民に聞き返すものだった。

 JA福島中央会の菅野孝志会長は江島氏の発言について「風評対策を教えてくださいというのはおかしな話だ」と政府の本気度を疑う。政府は基本方針で、風評対策に前面に立って取り組む姿勢を示していた。それにもかかわらず、他人任せとも受け止れる発言が出てきたことに「政府自身が風評影響を調査し、対策を考えた上で、われわれと一緒に取り組むのが筋だ」とくぎを指した。

 福島県水産加工業連合会の小野利仁代表は、風評払拭に必要となる処理水に関する情報発信が圧倒的に足りないと感じている。昨年十月に出席した意見聴取会から半年以上が経過した。この間、基本方針決定まで事態が進んだにもかかわらず、政府が風評対策の方法を聞き取る姿勢に「話が前進している感じはしない」と突き放した。

 福島県旅行業協会の鈴木常雄副会長は、政府が具体的な対策案を示さないまま一方的な聞き取りに終始する姿勢に、風評被害を抑制できる確信がないまま処分方針を決定したと疑念を抱く。

 風評被害を抑えるためには国民的な合意形成が必要とし、「政府がたたき台を示さなければ議論に発展しない」と指摘した。「このままのやり方では、二年後とされる処分による風評被害の発生は避けられない」と危惧した。

関連記事

ページ上部へ戻る