福島県内207校に災害リスク 浸水・土砂警戒区域に立地 文科省調査

 

 豪雨や台風で被災の恐れがある浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地し、自治体が防災上の配慮が必要と判断している公立学校(小中高校や幼稚園など)は福島県内に二百七校あり、全体の22・5%に上る。八日、文部科学省の調査で明らかになった。浸水想定区域に立地する学校百二十八校のうち、施設内への浸水対策を実施したのは二十校(15・6%)にとどまった。全国的に大規模な水害や土砂崩れが相次ぐ中、施設面を中心に学校の安全対策が不十分な実態が浮き彫りとなった。

 全国の全ての公立学校が対象となる初めての調査で、県内では九百十八校が対象。二〇二〇(令和二)年十月時点で浸水・土砂災害区域に立地しているかなどについて尋ねた。浸水・土砂災害区域に立地する県内の学校数の内訳は【表】の通り。

 改正水防法などで義務付けられている避難確保計画を作成したのは、浸水想定区域では百校(78・1%)で、土砂災害警戒区域では八十四校のうち七十一校(84・5%)だった。

 避難確保計画の作成状況を区域別で見ると、浸水区域では幼稚園が九校(69・2%)、幼保連携型認定こども園が三校(33・3%)、小学校が五十五校(85・9%)、中学校が二十校(80・0%)、高校が九校(69・2%)だった。幼稚園で20・6ポイント、幼保連携型認定こども園56・3ポイント、中学校3・8ポイント、高校6・6ポイントそれぞれ全国平均より下回った。小学校は0・4ポイント上回った。

 一方、土砂災害区域では幼稚園が一校(50・0%)、小学校が四十七校(85・5%)、中学校が十六校(84・2%)、高校が四校(80・0%)となった。小学校が6・8ポイント、中学校が5・7ポイント、高校が4・6ポイントそれぞれ全国平均を上回った。特別支援学校は両区域の六校全てで計画を作成している。

 文科省は浸水区域の学校について、ハード面の対策も調べた。義務ではないが、止水板の設置など建物への対策を行ったのは二十校(15・6%)、電気設備の浸水防止策は十九校(14・8%)だった。

 郡山市は二〇一九年十月の台風19号で市内の小学校三校が浸水した。市担当者は「校舎の改修などのハード面に加え、避難確保計画の作成などソフト面を推進する」と話した。

 台風19号で夏井川などが氾濫したいわき市では、浸水想定区域に公立幼稚園三校がある。市担当者は「限られた財源の中、浸水対策などで十分な予算を確保するのは難しい」と訴える。このため毎年四月に避難確保計画を見直し、必ず計画に基づいた避難訓練を実施している。

 文科省は県教委や市町村教委に調査結果を周知するとともに、避難確保計画の作成や計画に基づく避難訓練の実施を要請する。さらに工事に関する補助金の拡充に向けて政府内で協議を進める方針。

※浸水想定区域 豪雨や台風などによる最大規模の河川氾濫や高潮を想定した場合に浸水被害が及ぶエリア。国土交通省や都道府県が指定し、市町村がハザードマップを作成する。避難に手助けが必要な子どもや高齢者らが利用する要配慮者利用施設が区域内にあれば、施設ごとに避難確保計画の作成と避難訓練実施が義務付けられる。土砂災害発生の危険がある地域は「土砂災害警戒区域」として都道府県が指定し、区域内の要配慮者利用施設は計画作成と訓練が義務となっている。

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