福島UといわきFCが福島県民に勇気 両チームとも好調維持
福島県内サッカー界の両雄が、間もなく折り返しを迎えるリーグ戦で好調を維持し、県民を勇気付けている。J3、8年目の福島ユナイテッドFC(福島U)は前半戦残り2試合で3位。ゴール前の粘り強い守備が光り、僅差を制す試合が多い。日本フットボールリーグ(JFL)2年目のいわきFCは無敗の首位。J3参入を逃した昨季の悔しさをばねに、鋭い攻撃で得点を重ねている。両クラブのサポーターは上のカテゴリーを目指す選手に期待し、声援を送り続ける。
■勢いに乗る福島U 活動休止も乗り越え
昨季は18チーム中13位だった福島Uは、7勝2分け3敗の勝ち点23で3位に付ける。4月に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生による活動休止もあったが、再開後は6勝1敗と勢いに乗っている。
時崎悠監督(42)=福島市出身=が就任した今季は、堅い守備から攻撃を組み立てる意識が浸透した。11失点はリーグ2番目に少ない。7勝のうち1点差が6試合。流れが悪い時間帯でも体を張って守り、確実に勝利を積み上げている。
全試合で先発している元日本代表のGK山本海人選手(35)は「勝つことで自分たちはやれるという意識が上向いてきた。勝負どころで戦える頼もしいチームになった」と若手の成長を感じている。
福島Uは現時点でJ2ライセンスの取得要件を満たせず、自動昇格する2位以上に入ってもJ2で戦えない。ホームのとうほう・みんなのスタジアム(あづま陸上競技場)は年度内に天然芝の張り替えと照明4基の新設が見込まれ、さらなる環境整備や経済基盤の確立を目指している。
J3参入後の最高順位は2014(平成26)、2015年の7位。4日のテゲバジャーロ宮崎戦はアウェー戦5連勝が懸かる。時崎監督は「勝たないことには始まらない。上位で戦い続けたい」と結果を残し続ける決意だ。
■いわきFCは堂々の首位 挑戦を続けた結果
いわきFCは第14節を終え、9勝4分けの勝ち点31で堂々の首位に立つ。田村雄三監督(38)は「J3昇格に向かってチーム一丸となって挑戦を続けてきた結果」と手応えを示す。
Jリーグ入りを目指して2016(平成28)年、県社会人サッカーリーグ2部に参戦して以来、毎年カテゴリーを上げてきた。だが昨年は最終節で敗れ、勝ち点わずか1の差でJ3参入を逃した。
今季は「HUMBLE&HUNGRY(謙虚に、貪欲に)」をスローガンとし、チームの原点に回帰してフィジカル強化を徹底した。堅守で相手を封じ、全員が攻撃の起点としてハードワークを心掛ける。スタメンを固定せず、練習から緊張感を持って競い合っている。チーム最年長のFW鈴木翔大選手(28)は「前線の得点率が課題。決定力を身に付けたい」と向上心を語る。
J3参入にはライセンス取得が必要。その上で、リーグ4位以内で、かつJリーグ準加盟に相当する「百年構想クラブ」の認定を受けたチームの中で2位以内に入る必要がある。7月3日に敵地で戦うソニー仙台には、5月の天皇杯1回戦で敗れた。過去に勝った経験がなく、鈴木選手は「勝利でJ3に向けた自信を付けたい」と意気込む。
■福島U、いわきFCサポーターが喜びと期待
両クラブを支える県民は今季の躍進を喜び、残り試合への期待を寄せている。
福島Uのスポンサーを務めるダイオーの佐藤卓宏社長(39)は、今季の全ホーム戦で飲食物販売のブースを設けてきた。「最後まで勝利を諦めない姿勢が今まで以上に強まっている」と選手の戦いぶりをたたえる。「福島の明るい未来のために残りの試合も勝ち切ってほしい」とエールを送る。
いわきFCを発足当初から応援している、いわき市の会社員高木永さん(49)は今季のホーム戦を全て観戦している。「先制されても引き分けや逆転に持ち込む強さがある。ヒーローが毎試合変わり、見ていて楽しい」と語る。「J3参入を目指して奮闘するチームを多くの県民と応援したい」と願っている。