宅地8年ぶり下落 福島県内路線価 復興需要が落ち着き、コロナが拍車

 

 仙台国税局は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2021(令和3)年1月1日時点の路線価を公表した。福島県内の標準宅地(4477地点)の評価基準額平均変動率は前年比0・1%マイナスとなり、2013(平成25)年以来、8年ぶりにマイナスに転じた。専門家は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う復興関連需要が落ち着いてきたことに加え、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の低迷が影響したと分析している。

 県内の標準宅地の評価基準額の対前年平均変動率は【グラフ】の通り。標準宅地は住宅地、商業地、工業地などの用途に関わらず、建物の敷地となる土地を指す。

 県内10税務署のうち、福島、会津若松、喜多方、相馬、田島の5税務署でマイナスに転じ、特に会津地方で下落が目立った。各税務署の最高路線価の所在地は飲食店などが並ぶ商業地域となっている。県不動産鑑定士協会副会長で国土交通省地価公示県代表幹事の佐藤栄一氏(59)=郡山市、栄鑑定評価代表=は「新型コロナに伴う営業自粛で売り上げが落ち込んだり、閉店した空き店舗の入居がなかったりなど、収益力低下や不動産の需要低迷が影響している」と分析する。

 震災後に急速に進んだ人口減少、消費者の地域外流出による商圏の衰退などに歯止めがかからない中、感染拡大が追い打ちを掛けたとみている。

 福島税務署の最高路線価は2014年以来、7年ぶりに下落した。JR福島駅東口での再開発や福島医大福島駅前キャンパス新設があった一方、中合福島店の閉店、新型コロナの感染拡大に伴う飲食店の収益力の低下などが大きく響いたとみられるという。

 佐藤氏は今後の見通しについて「人口減少や新型コロナなどマイナス要因はあるが、超低金利の継続などで不動産市場は大きく崩れるには至っていない」とし、「新型コロナのワクチン接種が進めば、経済活動が活発になり土地の価格も回復する可能性があるのではないか」と分析している。

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