福島県大熊町で製鉄遺跡発見 宋銭など発掘 中世の可能性
井戸神沢製鉄遺跡の現地説明会で発掘調査について説明を受ける参加者(大熊町教委提供)
2022/02/24 18:01
出土した銅銭。(左から)「大観通宝」「宋元通宝」。右は判読できず
福島県大熊町野上字湯の神地内で製鉄遺跡が発見され、町教委は「井戸神沢製鉄遺跡」と名付け、調査を進めている。町教委によると、遺跡から宋銭が発掘されたため、中世(鎌倉時代)の製鉄工場跡の可能性が高いという。
遺跡は海岸から西へ約10キロ、JR常磐線大野駅から西へ約5キロに位置する。熊川の浸食によってできた丘陵の南側斜面にあり、288号国道の拡幅工事中に発見された。
排滓(はいさい)場3基が見つかり、1つの排滓場の炉の近くから3枚の銅銭と鉄滓15トンが出土した。銅銭のうち2枚には「宋元通宝」(960年~)、「大観通宝」(1107年~)とそれぞれ記されており、中国の宋王朝(10~13世紀)で鋳造された宋銭だった。残る1枚は劣化しており、判読できなかった。宋銭の流入時期から、鎌倉時代のものとみられるという。
製鉄遺跡から銭が出土したのは浜通りで初めてで、呪術や祭祀的行事で使用されたと推測されている。町教委は今後、炉内から出土した炭について放射性炭素年代測定法による科学的年代測定を行う予定。
町教委は1月に現地説明会を開いた。担当者は「大熊町の中世史をひもとく資料とデータが得られた」としている。